軍事支援に議会は賛否両論

ロシアが2014年にウクライナ領クリミア半島を不当に併合し、ウクライナ東部で分離独立派の武装蜂起を仕組んで以来、アメリカの特殊部隊とCIAはウクライナ兵の訓練に協力してきたと、米ヤフーニュースは報じている。

米軍関係者も、ウクライナの軍事能力は2014年以降に大幅に向上したと自信を深めている。

「われわれは塹壕の中でウクライナ兵と共に訓練してきた」と、この件に詳しい元米国防総省高官は言う。「兵士たちの素性も能力も、彼らの意気込みも分かっている」

非正規戦に備えたウクライナ軍の訓練を現場で見たという某欧州機関の当局者も、北のベラルーシから侵入してきたロシア軍は森に潜む敵や対戦車兵器による奇襲攻撃に遭うだろうと述べていた。

なにしろロシア軍の進路の「両側には深い森が延々と続いている」と、この人物は言う。「敵の接近してくる方角は分かっているのだから、奇襲をかけるのは簡単だ」

米バイデン政権とNATO諸国は、一貫してウクライナ支持の姿勢を表明してきた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナの分離独立派2州の「独立」を一方的に承認し、いわゆる平和維持軍の派遣を発表したときは、直ちに強い言葉で非難した。

アメリカはロシアに対する制裁の第1弾を発動し、今後さらに制裁を強化すると警告しているが、NATOに加盟していないウクライナに軍隊を派遣し、キエフの政府を防衛することまでは考えていないとも明言している。

近年、アメリカでは、大統領が議会の承認なしに国外で軍事行動を起こす権限(いわゆる戦争権限)をめぐり、その制限の是非が活発に議論されてきた。

制限を支持する側は、ここ数十年、歴代の大統領は戦争権限を米国憲法が許容する以上に拡大してきたと批判している。2月22日には民主党のピーター・デファジオ下院議員を筆頭に40人以上の議員が連名で大統領に書簡を送り、議会に諮ることなくウクライナへ軍隊を送らないよう求めた。

これまでの戦争権限に関する議論の多くは、イエメンの反政府勢力ホーシー派と戦うサウジアラビア主導の連合軍に対するアメリカの軍事支援の是非に重点が置かれていた。

だがイエメンでの戦争と異なり、ロシアの侵攻に直面したウクライナを支援することについては、議会で幅広い超党派の同意ができている。

ただし一枚岩ではない。

上院民主党有力者の側近によれば、ウクライナ市民のレジスタンス運動への軍事支援について、既に超党派の議論は行われているが、まだ法案提出の段階ではないようだ。共和党主導のNYET法案にも、かなりの数の共和党上院議員が署名を拒んでいる。

こうした分断がある限り、ウクライナ市民に対する武器供与を大統領権限の範囲内と認めるという合意が、すんなりまとまるとは思えない。

たとえロシア軍の全面侵攻でウクライナ政府が崩壊したとしても。

From Foreign Policy Magazine

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