ノルドストリーム2が稼働すれば、ヨーロッパ、特にドイツはますますロシア産ガスにエネルギー供給を依存するようになると以前から懸念されていた。プーチンは今まで以上に強力な切り札を手に入れ、エネルギーに飢えたヨーロッパを脅すようになる、というのだ。

しかも、このパイプラインのおかげで、プーチンはウクライナを孤立に追いやることができる。現在はロシア産ガスの多くはウクライナを経由してヨーロッパに輸送されているが、ノルドストリーム2が稼働すれば、ウクライナ経由の輸送ルートの重要性が低下するばかりか、ウクライナ政府の貴重な収入源である通行料が大幅に減ることになる。

ウクライナにとっても、ドイツの英断は「ちょっとした驚きだったが、もちろん大歓迎されている」と、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いるウクライナ政府に近い情報筋(公的発言をする立場ではないため匿名を希望)は本誌に明かした。

「これ以上攻撃的な動きに出たら、どんな目に遭うか、ロシアに思い知らせるには非常に有効だろう」と、この情報筋は述べた。「もちろんドイツがノルドストリーム2計画から完全に手を引き、今後もウクライナ経由のルートを使う意思表示をするほうが望ましいが」

EU経済も大打撃を受ける?

ウクライナの国営ガス会社ナフトガスのユーリ・ビトレンコCEOはドイツの決定が発表される前日の21日に、既に稼働しているノルドストリームを停止させる必要があると述べた。ノルドストリーム2の承認停止を受けて、本誌がコメントを求めると、ビトレンコは「現実にどの程度効果があるかは分からない」と慎重な見解を述べた。

ドイツのロベルト・ハベック経済・気候保護相は22日、ロシア産ガスの供給がストップしてもドイツ経済に支障はないと発言。アンナレーナ・アボック独外相は、「ドイツは国家経済に及ぶ影響を進んで受け入れると胸を張って宣言し、自由で民主的なウクライナに(連帯の意思を)示すことが重要」だと述べた。

英シンクタンク・王立国際問題研究所の上級研究員ニコライ・ペトロフは22日、ノルトストリーム2の停止を決めたドイツは、長期的には既存のノルトストリームを含め、ロシアと自国を結ぶ2本のパイプラインの利用について再検討を迫られるだろうと、本誌に語った。

「今の段階でノルドストリーム2の承認手続きを止めるのは簡単だが、問題はウクライナ経由の輸送が止まった場合どうなるか、だ」

EU最大の経済大国ドイツがこれまで以上に深刻なエネルギー危機に見舞われることになり、EUの経済と市民生活は大きな打撃を受けかねない。

2月26日現在、ロシア軍は今にもウクライナの首都キエフを陥落させる勢いで進軍している。

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