<ロシア軍がウクライナ侵攻を始める2日前、ロシア制裁の手段にずっと二の足を踏んできたドイツは同盟国を喜ばす「英断」を下した。しかしキエフが陥落すれば、エネルギー危機に見舞われることになりかねない>

バルト海経由でロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム2」。既に工事は完了し、稼働に向けてドイツのゴーサインを待つのみだったが、ロシアがウクライナ侵攻を始める2日前の2月22 日、ドイツはロシア側が何十億ドルもの工費をつぎ込んだこの事業に待ったをかけた。

あらゆる機会をとらえて西側の分断を図ってきたロシアのウラジール・プーチン大統領にとって、これは全くの計算外の動きだったはずだ。

ロシアがウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認したことを受け、ドイツのオーラフ・ショルツ首相はノルドストリーム2事業の無期限停止を発表。ここ数年この事業の停止を求めてきた西側の同盟国はドイツの英断を賞賛している。

「状況が根底的に変わった」と、ショルツは述べ、工費110億ドルのこの事業の承認手続きの停止を命じたことを明らかにした。

ノルドストリーム2をめぐり、ドイツとアメリカ、バルト3国、ウクライナとの関係がギクシャクし始めて久しい。プーチンの暴挙に対し、ドイツが腰の引けた姿勢を取り続けるのは、この事業のためだと言われてきた。

ウクライナとバルト3国は歓迎

今回のウクライナ危機でも、ショルツ率いるドイツの新連立政権はウクライナ支援をためらっているとして、同盟国から批判を浴びてきた。

ドイツはウクライナに武器を供与しないばかりか、エストニアが旧東独製の武器をウクライナに送ることすら許可しなかった。ドイツのウクライナに対する「軍事援助」は5000個のヘルメットのみ。これには同盟国の間で落胆と怒りが渦巻いた。

そのドイツがノルドストリーム2停止に踏み切ったのだ。ヨーロッパ各国、とりわけ東欧勢にとって、これは嬉しい驚きだった。ロシアと国境を接するバルト3国とウクライナは、追い詰められ、タガが外れたプーチンが国境地帯に派遣した10万人超のロシア兵の動きを息を詰めて見守っているからだ。

バルト3国のある国の外交官は匿名を条件に、ドイツはここ1、2週間「この選択を真剣に検討」していたと本誌に語った。

ドイツに再三ノルドストリーム2の停止を求めていた国々は胸をなで下ろしただろうが、ロシアにとっては「今回の決定は晴天の霹靂どころではなかったはずだ」と、この外交官は話す。「ロシアの意表を突いたのは良いことだ。少なくともヨーロッパではショルツ政権の評価は一気に高まった」

ロシア産ガス依存を警戒する声も