では果たしてカザフスタンは、旧ソ連から独立した国家の領土をロシアが改めて制圧するという「ウクライナ型」の分裂パターンをたどるのか。ロシアはカザフスタン北部を占領することで、あえて世界を挑発するつもりなのか。

答えは、おそらくノーだ。少なくとも近い将来にはあり得ない。それを裏付ける理由は数多くある。

第1に今回のカザフスタンの騒乱と、旧ソ連からの独立国の地域を制圧したロシアのパターン(08年のジョージアや14年のウクライナ)の間には明確な違いがある。ジョージアやウクライナとは違って、カザフスタン当局とデモ隊はロシアとの経済的・軍事的関係を断つことをほとんど考えていない。

カザフスタンの騒乱は目下のところ、20年のベラルーシの民主化運動に似ている。民主主義や透明性、野党勢力を長年にわたって抑圧してきた「泥棒政治」への抵抗だ。

国際的な広がりは全くない。加盟しているCSTOやユーラシア経済同盟などの機関から離脱しようという意思も、ほとんどないようだ。ジョージアやウクライナとは異なり、EUやNATOへの加盟を急ぐ気配もない。

第2に、名目上はカシムジョマルト・トカエフ大統領が率いるカザフスタンの指導層は、狂信的な愛国主義を政権の支えにしようという姿勢をほとんど見せていない。公式には19年に終わりを告げたナザルバエフ時代の数少ないプラス面の1つは、民族間の融和に力を入れたことだ。就任から3年近くたつトカエフも、この路線を継承している。

カザフ語の表記をロシア語で使われるキリル文字からラテン文字に切り替えることを決め、ロシアのウクライナにおける領有権の主張を認めない姿勢を示すなど、カザフスタン政府は主権を強化する政策を緩やかに打ち出している。しかしカザフスタンのナショナリズムの高まりへの懸念は、ロシア系住民の権利と安全を守るためにロシア政府が北部地域の占領を発表するほど強くはない。民族間の暴力はロシアが介入する理由になり得るが、ロシア系住民が標的になっている兆候は皆無だ。

これまでの前提は一夜で崩れ去った

だがこうした現実があるからといって、安心できるわけではない。カザフスタンが主権国家だという前提は、指導層が危機を打開するためにロシア軍部隊を招き入れたことから、ほぼ一夜で崩れ去った。

モスクワでは、プロパガンダを広める者たちが後に続いた。ロシアのニュース専門テレビ局RTのマルガリータ・シモニャン編集長は、すぐにカザフスタン当局への要求リストを発表。ロシアのクリミア領有を認め、キリル文字を維持し、ロシア語を第2公用語に昇格させるという内容だ。

プーチンが築いた自己欺瞞の帝国
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