彭帥の告発は、北京冬季五輪までわずか3カ月というタイミングで行われた。冬季五輪については複数の人権団体が、主に中国が新疆ウイグル自治区のイスラム教徒を抑圧していることを理由に、人権侵害への抗議としてボイコットを呼びかけており、アメリカをはじめとする複数の国が外交的ボイコットを検討している。各種人権団体は、2022年の北京五輪を、ヒトラー政権下で開催された1936年のベルリン五輪になぞらえている。中国は一貫して、一切の人権侵害を否定しており、ウイグル人の弾圧についてはテロ対策の一環だと主張している。

スイスを拠点とするIOC(収入の73%を放映権料の販売、18%をスポンサー料から得ている)は中国を批判しておらず、IOCはスポーツ組織にすぎず、主権国家の政策について行動を起こす権限はないという主張を繰り返している。

歴史家で香港大学教授の徐国琦は、2008年の北京夏季五輪と2022年の北京冬季五輪の違いについて、次のように説明した。

「2つの大会の大きな違いは、2008年の大会開催時には、中国政府が国際社会の機嫌を取ろうとしたことだ」と彼はAP通信に宛てたメールの中で述べた。「だが2022年の大会については、国際社会が中国をどう思おうと気にしていない」

WTAは中国に圧力をかけられる立場

NBA(全米プロバスケットボール協会)は以前に、当時のヒューストン・ロケッツのゼネラルマネージャーだったダリル・モーリーが香港の民主化デモを支持するツイートを投稿したために、中国の放送局が2019~2020シーズンの試合を放送しないと表明し、推定4億ドルの損失を被った苦い経験がある。だがWTAはIOCやNBAほど中国からの収入に依存していない。

サイモンは声明の中で、彭帥はとてつもない勇気を示したと称えたが、彼女の身の安全については今も心配していると述べた。

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