――大変なことといえば?

トイレです。インドでは、特にインディーズ作品だと予算がなくて......。普通は撮影現場にトイレの備わったトレーラーがありますが、予算がないとそういうものもなくなるので。

そんな撮影のときには朝もちょっと口を濡らす程度にして、1日中水を飲まず、ホテルに帰ってからがぶ飲みします。暑い時には死にそうになりますけど。

私はムンバイに住んで、ヒンディー語のヒンディー映画を撮っていますが、ヒンディー語がそんなにできなくても不自由はありません。インドでは学校教育を受けた人たちの間では英語も共通語。監督やプロデューサー、美術監督、照明技師もみんな撮影中は英語を話します。脚本も英語に訳してもらっています。

――人間関係などはどうですか?

私は日本人で女性、しかも話し方がおっとりしているので、普通にしているとカメラマンに見えない。制作会社に行くと、「オーディションに来たのか」と言われたりします。

だから撮影初日の現場などではたまに、私を知らないスタッフからの「あの人がカメラマン?」「頼りない」という視線を感じることがあります。インドのカメラマンはひげが生えていて、白髪で、みんなに怒鳴り散らすような、私とはまったく違うタイプの人が多いので。

そういうときは何かパフォーマンスをしないといけないと思い、大きな手持ちカメラで動き回ってアピールしたりします(笑)。

3年ほど前、スターが8人くらい出演する大作を撮影したときにも、監督は私を信頼してくれていましたが、周囲の人から「なんでこの人?」と思われている感じを受けたんです。

だからアクション場面の撮影で、私もワイヤーで吊ってもらい、俳優が落下するところを手持ちカメラで撮影しました(下の写真)。

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COURTESY OF KEIKO NAKAHARA

そんなことはそれまで一度もしたことはなかったのですが、「この、いやーな雰囲気をどうにかしたい」と思って(笑)。女だってカメラマンできるんだよ、アクションだって撮れるんだよ、と証明したかったんです。

そのショットが一発で綺麗に撮れたときには、拍手喝采をもらいました。それでみんな納得してくれた。ときには体を張って証明しないと、という場面もありますね。

Keiko Nakahara

中原圭子

●撮影監督

※この記事は2021年8月10日/17日号「世界が尊敬する日本人100」特集掲載の記事の拡大版。詳しくは本誌をご覧ください。

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