1月4日、ジョージア州の上院選決選投票の応援演説で、トランプはペンスが行動しないなら「彼をよく思わなくなるだろう」と暗に圧力をかけた。トランプは自分が「強い立場」のつもりでこんな発言をしたと、側近らはみている。2024年の大統領選で最有力候補になる、たとえ出馬しなくても共和党の最有力者として後継者を決められる。結局、自分ほど大衆を引き付けられる人間はいない、と。

「最後まで戦う」はずが

1月6日朝、それは一目瞭然だった。ワシントンに「盗みをやめろ」と訴える数万人が集結。トランプは彼らに「平和的かつ愛国的に」議事堂に向かって行進するよう呼び掛けた。バイデンの勝利認定を阻止したいとの思惑からだ。だがわずか数時間後、彼はホワイトハウスでデモ隊が議事堂に突入する映像を目にし、ペンスは議事堂から急いで避難する羽目になった。

トランプと彼の家族や忠実な側近にとっては最悪の出来事だった。集会はトランプの政治的将来のため──最後まで戦う姿勢を示すためだった。だが1日が終わる頃には、それはもはや不可能になっていた。家族ぐるみの友人の中でも「これが大惨事だったと考えていないのは取り巻き中の取り巻きだけ」だと、友人の1人は語っている。

トランプ一族も個人的代償を払った。クシュナーの義妹でモデルのカーリー・クロスは、「民主的に行われた選挙の結果を受け入れるのは愛国的、受け入れずに暴力を引き起こすのは反米的」だとツイート。義兄夫婦にそう伝えたらとフォロワーに聞かれると「もうやってみた」と答えた。クシュナーとイバンカはこの公開の場でのやりとりに激怒したという。トランプワールドでは忠誠が第一なのだ。

だがイバンカ夫妻も、友人や知人の多くがクロスと同じ気持ちだと気付いている。「彼らは関係修復に取り組むべきだと分かっている」と夫妻のニューヨーク在住の友人は言う。「2人ともばかじゃない」

議事堂突入の1週間後、上院でのトランプの2度目の弾劾裁判が決定。4年間トランプと密接に連携してきたミッチ・マコネル共和党上院院内総務もトランプは弾劾に値する罪を犯したと周囲に語った。大統領就任当初からの側近の1人は落胆を隠さない。「一時は、選挙結果を覆せないと分かっていても、自分たちの勝ちだと考えていた。実際、勝っていた。あんな大混乱になるまでは」

<本誌2021年1月26日号掲載>

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