<外交通で知られるが、大統領選では控えめな外交政策を掲げたバイデン。中国とはうまく渡り合えそうだが、欧州では壁が立ちふさがり......。新大統領の新外交で、世界はここまで変わる。本誌「バイデンのアメリカ」特集より>

米大統領選で勝利を確実にしたジョー・バイデン前副大統領は外交通で知られる。

20201124issue_cover200v2.jpg


問題は、同盟国がバイデンの申し出を受け入れるかどうかだ。ドナルド・トランプ大統領のけんか腰の孤立主義外交が4年間続いたせいで、同盟国の不信は根深く、そう簡単には解消できそうもない。

バイデンはアメリカを立て直すために大統領選に出馬した。内政では野心的な課題を掲げているが、それに比べて外交政策は控えめだ。

彼が上院外交委員長を務めていたのは20年近く前。その頃と比べればもちろん、副大統領時代と比べても世界は大きく変わった。昔取ったきねづかは通用しそうもないが、それでもバイデンはアメリカを再び世界のリーダーの地位に引き上げようとしているし、多くの国がそれを望んでいる。

バイデンの政権移行チームの国家安全保障担当と、メディアが占うバイデン政権の閣僚候補を見ると、全員が有能な米政界のインサイダーで、大半は上院議員時代か副大統領時代、またはその両方でバイデンと組んだ経験がある。

欧州の同盟国にとって、この状況は基本的には望ましい。フランスやドイツの指導者はバイデンの勝利が確実になると、安堵のため息を漏らした。

現状では、欧州はアメリカに頼らざるを得ない。トランプは就任4カ月後に初めて欧州を訪れ、NATO首脳会議に出席したが、集団防衛をうたった北大西洋条約第5条の尊重を誓おうとはしなかった。

アンゲラ・メルケル独首相はその後に行った演説で、「他国を全面的に頼れる時代」は「終わりを迎えたようだ」と語り、欧州は「自らの手で自らの運命を守らなければならない」と訴えた。

だが以後3年半の間にメルケルはじめEU各国の指導者は自前で十分な防衛力を持とうと努めただろうか。答えは否。軍備増強に十分な予算を投じる政治的意思がある国はEUには見当たらない。

アメリカに代わって軍事同盟の盟主になれる国もない。欧州は地域の集団防衛体制を固める「接着剤」としてアメリカを必要としているのだ。

欧州との関係修復に壁、今ではそもそも「欧州」の定義が曖昧だ