菅義偉首相の誕生が濃厚になり始めた9月上旬、株式市場は早くも「スガノミクス」銘柄を物色し始めた。注目を集めた1つが、SBIホールディングス<8473.T>。地方銀行に次々と資本参加して連合を形成する戦略が、地方経済の活性化と地銀再編に言及する菅氏の方向性と合致するとの見方が広がった。
スガノミクスはSBIにとって市場が期待するような追い風になるのか。実際、地銀の中には提携によってすでに成果を出したところもある。一方で、業界内からはのみ込まれることを懸念し、協業に後ろ向きな声も聞こえる。
「地方銀行の数が多いのは事実」
SBIは安倍晋三前首相が進めてきた「地方創生」に着目し、商機を見いだそうとしてきた。集めた預金を貸し出す伝統的な商業銀行モデルから脱却できない地銀にノウハウを提供し、高度な金融サービスに生まれ変わらせることを目指してきた。SBIにとっては、これまで手の届かなった地方に顧客の基盤を広げられるメリットがある。
2019年9月の島根銀行<7150.T>以降、SBIは4つの地銀と資本・業務提携を結んだ。将来的に10行との提携を目指すSBIは、水面下で複数の案件を進めている。北尾吉孝社長によると、残りの6行との提携も今年度内には見通しがつきそうだという。
19年度上期に19億5900万円の経常赤字(単体)だった島根銀行は、下期に5300万円の黒字に転じた。「有価証券運用の高度化で収益が様変わりした」(島根銀の広報)と、さっそくSBIとの提携効果が出た形だ。ほかにも「SBIのデジタル技術が使えるおかげで顧客ニーズに対応できるようになった」(筑邦銀行<8398.FU>広報)といった声も出ている。
北尾社長は7月上旬、ロイターの取材に対し、「地方創生に尽力することが、持って回ってわれわれのビジネスのプラスになる」と語っている。
そうした北尾社長の戦略に一段の追い風になりそうなのが、安倍政権以上に地方活性化の必要性を訴える菅政権の誕生だ。過疎化が進む秋田県の農村出身であることを自身の原点とする菅首相は、自民党の総裁選を通じて地銀の再編にもたびたび言及してきた。
SBIの株価は菅氏が自民党総裁への出馬を正式表明した9月3日に急伸、その後も年初来高値を更新する勢いを保った。口座の不正引き出し問題で一時的に値が崩れた局面があったものの、今も昨年7月以来の高値水準を維持している
マイノリティー出資にとどめるSBIの戦略は、再編とは無関係にみえる。しかし、統合や合併にまでは踏み込みたくない地銀が、従来型のビジネスモデルを転換して生き残りを図るため、SBIへ支援を求めるのではないかとの見方が浮上している。