アメリカは中国との陸上戦は考えていない。アメリカの主な目的は、中国の地政学的、経済的な挑戦が世界での自国の優位を崩さないことだ。オーストラリアは地域の安定と、輸出の3割を中国に依存する経済を何とか両立させたい。だが中国の拡張主義が続けば、このご都合主義の戦略も通用しなくなる。

日本の河野太郎防衛相(当時)は8月、南シナ海や東シナ海、香港で現状を変更しようという中国の姿勢は「高いコスト」を払うことになると述べた。そのとおり、コストが「高い」という点が強調されるべきだ。拡張主義のコストが対処可能な程度なら、習は外交政策を変えようとしない。

イタリアの思想家マキャベリは、君主は「愛されるより恐れられるべきだ」と論じたが、今の習は恐れられるより憎まれる存在だ。そこに隙があるはずだが、周辺の主要国が歩調を合わせなければ、それを突くのも不可能だ。

各国は共通のビジョンの下、確かな戦略を取らなくてはならない。さもないと中国は地域を不安定化させることも、あるいは戦争さえもいとわずに、武力に訴え続ける。

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<2020年9月22日号「誤解だらけの米中新冷戦」特集より>

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9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。
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中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は今年の新年祝辞で、2020年は「里程標の意味を持つ1年」になると語った。この予言は的中したものの、あいにく習が描いていた形ではなかった。

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