市場の「見えざる手」が欧米企業を救ってくれないなら、欧米諸国の政府が救うしかない。中国の投資家を締め出すなら、「それに代わる十分な資金を提供しなければならない」と、モンゴメリーは言う。国内企業か同盟国の企業に自国企業の株式を取得してもらうようインセンティブを与える手もある。

さもなければ、政府が直接的に資金を注入することだ。ドイツはコロナ危機で打撃を受けた企業に融資と融資保証を提供するため、他国に先駆けて5000億ユーロの「経済安定化基金」を設置した。こうした枠組みを通じて、中国企業が狙う欧米企業にテコ入れする手も有効だろう。

出会い系アプリのグラインダーは16年に中国企業に買収された。だが米政府は19年、中国政府にユーザーの個人情報が流出する懸念があるとして、中国企業にグラインダーの売却を命じ、中国企業はこれに従った。

実はこの話には裏がある。グラインダーの売却先はデラウェア州に本拠を置く米企業だが、その共同オーナーは中国の検索エンジン「百度(バイドゥ)」の元幹部とシンガポール在住のビジネスマン。つまり、グラインダーは実質的に今も中国資本の傘下にあるのだ。

欧米諸国はこうした状況を指をくわえて見ているわけにはいかない。さもないと、非友好国の魔の手から知的財産と基幹技術を守れない。

From Foreign Policy Magazine

<2020年9月22日号「誤解だらけの米中新冷戦」特集より>

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9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。
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だが今、この2つのアプリは地政学的な対立の焦点になっている。

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