頭のなかでスケジュールをざっと確認した。
子どもたちの学習塾の予定、原稿の締め切り、家事、犬、そして何より書店でのイベントだ。
「いちばん早くて来週の火曜日、五日です」
「それでは五日まで塩釜署にてご遺体はお預かりします。ご自宅でお亡くなりになったということで、死体検案書という書類をお医者様に作成して頂いています。この書類は、お兄様の戸籍抹消と、埋葬や火葬のために必要な書類です。この作成費用が五万円から二十万円かかります。先生によってお値段が違いまして......いずれにせよ、ご遺体の引き渡しの際にこちらのお金がかかって参りますので、少し多めにご準備頂ければと思います」
死体検案書という言葉も初めて聞いたが、その値段が医師によってそんなにも幅があるとは驚いた。混乱しながらも、頭のなかではすでに金策がはじまっていた。じわじわと不安が広がるのがわかった。自分にとってはかなりの金額を短期間で用意する必要があることに気づいたからだった。
「それでは塩釜署でお待ちしております」と言いつつ、電話を切りそうになっている山下さんに慌てて質問した。
「兄の息子なんですが、今どうしているんですか?」
「息子さんは児童相談所が保護しています。明日以降、児童相談所からも連絡が行くと思いますのでよろしくお願いします」
そして山下さんが急に思い出した様子で、今度は私にこう聞いた。
「あ、こちらの葬儀屋さんとかご存じです?」
※後編:「悲しいとかないの?たった一人のお兄さんやろ?」──不仲だった兄を亡くしたに続く。
『兄の終い』
村井理子 著
CCCメディアハウス
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