交渉手段としての関税

5月に交渉が暗礁に乗り上げる前に争点となっていたのは、トランプ政権が中国からの輸入品2500億ドル相当に課した25%の制裁関税の撤廃の有無だった。米国は中国に合意を守らせるため、制裁関税の一部継続を望んだが、中国は全制裁関税の即時撤廃を求めていた。

その後事態はエスカレート。米国はこの2500億ドル相当について国慶節(中国の建国記念日)に当たる10月1日に制裁関税を30%に引き上げる予定。また別途3000億ドル相当についても一部については9月1日に関税を15%に引き上げ、残りも12月15日に15%に引き上げる計画だ。

アナリストによると、米政府は中国への歩み寄りを示すため、5%の税率引き上げの延期や、12月15日に予定している15%の制裁関税導入の延期を受け入れる可能性がある。

中国は9月1日から米国産原油に5%の制裁関税を課しているが、こちらも12月15日に予定している税率引き上げを延期する可能性がある。

国内への悪影響

トランプ氏は制裁関税のコストを負うのは中国だと繰り返し強調し、国内の小売業者や製造業者への悪影響を否定しているが、最近になって米中通商紛争が短期的には国内経済をも損なうと認め始めた。

中国の交渉責任者である劉鶴副首相も5日、国内経済への下押し圧力は強まっているが、政府はあらゆる困難に対応することが可能との認識を示した。

まだ使っていない武器

中国は、中国企業に被害をおよぼしているとみなす外国企業のリストを作成するとしている。また報復手段としてレアアース(希土類)の米国への輸出制限も示唆している。このほか中国が米ボーイング製航空機の注文を取消す可能性もある。

トランプ氏はゼネラル・モーターズ(GM)など米企業に対して中国から生産拠点を引き揚げるよう求めている。

背景

中国は航空宇宙、ロボット、半導体、人工知能(AI)、新エネルギー車など戦略的な10セクターについて、2025年までに産業基盤を底上げする方針を打ち出している。しかし米国は中国が技術移転の強制や知的財産権の侵害など、不公正な手段に訴えていると不満を抱いている。一方で中国は、米国の動きは世界経済における中国の台頭を妨害するものと受け止めている。

[ロイター]
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