Dhara Ranasinghe Stefano Rebaudo

[ロンドン 26日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は29日に理事会を開く。市場は今月は政策金利を据え置き、12月に利上げを予想するが、足元は、フランスの政治・財政不安による金利上昇、中東情勢を背景とする1バレル=100ドルを超える原油高という状況で、インフレリスクは高いままだ。

ラトボーンズ・アセット・マネジメントのマルチアセット投資責任者、デービッド・クームズ氏は「こうした状況下でどのように金利を設定するのか。極めて難しい決定だ」と指摘する。

今回の理事会を前に市場が注目する5つのポイントを整理した。

(1)どう動くか

主要政策金利は2.5%に維持されるとみられている。ECBはインフレ抑制のため6月と9月に利上げを実施したが、イラン戦争を背景としたエネルギー価格上昇により物価上昇圧力は続いている。

ロイター調査によると、エコノミストの多くは12月に25ベーシスポイント(bp)の追加利上げを予想している。MUFGのシニアエコノミスト、ヘンリー・クック氏は「ECBがインフレへの警戒感を大きく弱めたとは思えない」と述べた。

(2)今後の金利見通しについて何を語るか

ECBはこれまで通り「データ次第」の姿勢を堅持しそうだ。9月のユーロ圏インフレ率は3.8%と高止まりする一方、国債利回りの上昇が景気を下押しする可能性も懸念されている。こうした中で複数の政策担当者は最近、ラガルド総裁が「慎重な対応」と表現した路線の妥当性を強調した。

バークレイズの欧州金利戦略責任者ローハン・カンナ氏は「金融環境の引き締まりが進み、それが成長を鈍化させ、結果的にインフレ圧力を抑えるとの認識は明確に示されるだろう」と解説する。その一方で「紛争の行方やエネルギー価格の見通しには依然として大きな不確実性がある」と付け加えた。

(3)エネルギー主導のインフレ警戒度は

レーン専務理事兼チーフエコノミストらの発言を見る限り、ECBは現時点でエネルギー価格上昇が他の物価や賃金に波及することを過度には懸念していないようだ。

9月の食品・エネルギーを除くコアインフレ率は2.4%から2.5%へ小幅に加速しただけで、高いエネルギー価格がインフレの悪循環を引き起こすような「二次的波及効果」はまだ確認されていない。

ただ原油価格は年初来で約90%上昇しており、総合インフレ率もECBが目標とする2%を上回っているため、ECBは引き続き警戒姿勢を強調するとみられる。

23日に公表された調査では、ユーロ圏の消費者による今後12カ月間のインフレ期待もやや上昇した。

ラボバンクのシニア・マクロストラテジスト、バス・ファン・ゲフェン氏は「イランでの戦争が激化したり、エネルギー価格にさらなる上昇圧力がかかったりすれば、2027年に追加利上げが実施されるリスクは依然としてある」と語った。もっとも同氏自身は来年の利上げを予想していないという。

市場は遅くとも27年半ばまでに少なくとも2回の利上げがあると想定している。

(4)仏国債売りの影響

ECBはフランス市場の動向を注視している。フランスの10年国債利回りは24年ぶりの高水準となる5%超まで上昇。支持基盤が弱体化したマクロン大統領の政権は、財政再建を妨げかねない激しい抗議活動への対応を迫られている。

安全資産とされるドイツ国債に対して投資家が要求するフランス10年債の上乗せ利回り(スプレッド)は、前回理事会時点の92bpから167bpへ拡大した。

それでも市場の混乱に対してECBが直ちに介入するとは予想されていない。加盟国の資金調達環境が「不当かつ無秩序」に引き締まった場合に発動できる「伝達保護措置手段(TPI)」を使った国債購入に踏み切る可能性は当面低いとみられる。

ラガルド氏はフランスが財政健全化を通じて自国の債務問題を解決すべきだとの立場を示している。

ベレンベルク銀行のチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は「仮にフランスで危機が発生し、その影響が財政基盤のより健全な他国へ深刻に波及するなら、ECBはフランスではなく、そうした国々を守るためにTPIを利用するだろう」と述べた。シュミーディング氏によると、フランスの危機が経済成長に大きな打撃を与えると判断した場合、ECBは利上げを控える可能性もあるという。

(5)ラガルド氏の後任は誰か

世界経済フォーラム(WEF)の次期議長に就任する可能性も取り沙汰されるラガルド氏には、会見で後任人事について質問が集中しそうだ。

有力候補として名前が挙がっているのは、オランダ中央銀行前総裁のクラース・ノット氏と、スペイン中央銀行前総裁のパブロ・エルナンデス・デ・コス氏。ラガルド氏が任期途中で退任すれば、ECB理事会(6人で構成)の空席は、最近辞任したイザベル・シュナーベル氏の後任と合わせて2つとなる。チーフエコノミストのレーン氏も5月に退任する予定だ。

ラガルド氏の任期は来年10月までとなっているが、早期退任となれば来年春のフランス大統領選前に新総裁を選出する時間を確保できる。またスペインで解散総選挙が実施されれば、ECB総裁人事を巡る政治力学にも影響を与える可能性があると、アナリストらは分析している。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。