欠点も含めて「ありのまま」を描き出す
セッサの見解では彼が演じた若者には、一般に知られているボーデインらしさはまだ現れていない。「年を重ねたボーデインのいかにも彼らしい要素は、彼を取り巻く登場人物の中にある」と、とセッサは語り、若いボーデインを受け入れる料理人たちを挙げた。セッサが演じたのは、むしろそうしたものを吸収していく若者の姿だった。
「この19歳の若者は世の中のことを知らないのに、知っているふりをしている。それがどんな気持ちかは分かる」
映画は、ボーデインの好ましくない側面にも焦点を当てている。薬物使用、激しい気性、最悪の判断力──その全てが映し出される。彼の人生を好意的に描くために欠点をそぎ落として再構築するのではなく、「ありのまま」を感じさせる作品だ。
その後の運命を知って若き日のボーデインを見ると、作品は重みを増す。セッサも、未来を知る観客と、何も知らない当時の本人との隔たりを意識している。「本人には将来何が起こるか分からない」と、セッサはその夏のボーデインの転機について語った。「彼は本当に怖い決断をしようとしているんだ」
この映画は、セッサ自身にも深い痕跡を残した。「この人は、僕の人生を変えてしまった。もう自分の中に刻み込まれた」
「技術は教えられる。でも個性は、あるかないかだ」とボーデインは『キッチン・コンフィデンシャル』に記した。『トニー』を見た後に残るのは結局、ボーデインという人間の個性だ。
夢の「最強計算機」が実用化へカウントダウン。医療・通信・金融・AIはこう変わる