本物っぽくしたいね。
映画『ゴッドファーザー』(1972年)の監督を引き受けるに当たり、まだ30代の若造だったフランシス・フォード・コッポラはそう言ったと伝えられる。
そこで、まずは戦後のアメリカ社会をむしばんだヘロイン密売の歴史を物語の下敷きにした。
74年の『PART II』で脇を固めた悪党のモー・グリーンやハイマン・ロス、ロサト兄弟には実在のモデル(バグジー・シーゲル、マイヤー・ランスキー、ジョーとアルバートのギャロ兄弟)がいた。
完結編たる『PART III』(90年)には、ローマ教皇庁を揺るがした80年代前半の銀行スキャンダルが影を落としている。
だがコッポラは、『ゴッドファーザー』3部作はドキュドラマ(実録物)ではないと言っている。あれはアメリカにおける権力と資本主義の癒着を描いた物語であり、作中のコルレオーネ一族とその邸宅のモデルはケネディ家とマサチューセッツ州ハイアニスポートのその邸宅だとも。
「いいかね」と、かつてコッポラはこうも念を押している。「あれ(『ゴッドファーザー』の第1作)はマフィアの親分ヴィト・ジェノベーゼのドキュメンタリーじゃない。主役はティッシュを口に詰め頰をたるませたマーロン・ブランドだ」
それでも、マフィア映画がアメリカ社会の闇に光を当ててきたのは事実だ。例えば1920年代のアメリカを、アル・カポネと禁酒法の時代(における酒の密造・密輸ビジネス)を抜きに語ることはできない。高校の歴史の授業でも、あの時代を象徴する人物としてカポネの話を教えている。
だが組織犯罪とアメリカの歴史はもっと深いところでつながっている。それはアメリカが移民を受け入れ、20世紀前半の国内政治に組み込み、アメリカが世界の大国となる過程で、メディアと軍事力を通じて彼らを世界に広めていく壮大な物語だ。