産業界などには、南・東シナ海の問題を海上に突き出た数個の岩をめぐる争いくらいにしか見ていない人もいる。だが中国の大衆はそうは考えない。彼らにとって、南シナ海は台湾と同じ「聖域」なのだ。中国が東シナ海でさらなる挑発に出ないのは、日本との軍事衝突に発展すると負ける恐れがあるからだ。そうなれば中国の面目は丸つぶれとなり、共産党の権威が揺らぐ。だからこそ中国は時間をかけて海・空軍力の強化に努めている。

中国の指導部は、国民の気分次第で自分たちの戦略が左右されるのを知っている。21世紀の新冷戦は20世紀の冷戦よりも、経済の混乱に伴う不合理な国民感情の影響を受けやすい。

かつてのアメリカとソ連には、国内だけで経済を回せる力があった。だからグローバル化の荒波から守られていた。今は違う。世界の軍事・貿易・経済が融合したところにイデオロギーの対立が加わり、IT技術で物理的な距離が無意味になった不安定な時代だ。こうなるとアメリカと中国の関係は悪化する一方だろう。21世紀前半の世界は、米中間の新冷戦をいかに「熱戦」にエスカレートさせないかという厳しい課題を突き付けられている。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2019年02月05日号掲載「特集:米中激突 テクノナショナリズムの脅威」より転載>

※2019年2月5日号(1月29日発売)は「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集。技術力でアメリカを凌駕する中国にトランプは関税で対抗するが、それは誤りではないか。貿易から軍事へと拡大する米中新冷戦の勝者は――。米中激突の深層を読み解く。
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