Kentaro Sugiyama

[東京 3日 ロイター] - 2026年春闘は中小組合の健闘が目立ち、賃上げの裾野の広がりを印象付けた。連合がまとめた最終集計は、定期昇給分を含む平均賃上げ率が5.01%となった。人手不足が深刻化する中で企業規模を問わず賃上げの必要性は高まっており、27年春闘も4%台は確保できるとの見方が多い。一方、円安や原材料価格の上昇が企業収益を圧迫するリスクには注意が必要で、特に中小企業の賃上げ余力への影響が焦点となりそうだ。

26年の伸び率は鈍化したものの、24年(5.10%)、25年(5.25%)に続き、3年連続で5%台を確保した。中小組合の賃上げ率は4.69%と小幅ながらも前年から伸ばし、賃上げの流れが中小企業にも広がりつつあることが示された。

背景には慢性的な人手不足がある。企業規模を問わず賃上げを行わなければ人材を確保できないという状況へと変わりつつある。

仁平章・中央闘争副事務局長は3日の会見で、最終集計の結果について「賃上げが当たり前の社会に向けてさらに1歩前進できた」と評価した。

<企業収益が支え>

こうした環境を踏まえ、来年の春闘も高水準の賃上げが続くとの見方は少なくない。三菱UFJリサーチ&コンサルティングは現時点で27年春闘の賃上げ率を4.8%と予想している。26年をやや下回るものの、企業収益の底堅さが賃上げを支えるとみている。

企業は人件費や原材料費の上昇に直面しながらも、販売価格への転嫁を進め、高水準の収益を維持してきた。三菱UFJリサーチによると、22─23年に原油価格などが急騰した局面で実施した値上げが維持される一方、投入コストの上昇圧力はその後いったん落ち着いたことが利益拡大に寄与したという。

中東情勢の緊迫化による原材料やエネルギーのコスト上昇は懸念されるものの、6月の日銀短観が示した企業の業況は、堅調なAI(人工知能)・半導体需要や価格転嫁の進展などで底堅い。賃上げ率が一気に3%台まで低下するとの見方は現時点で広がっていない。

<高賃上げ継続への課題>

気掛かりなのは中小企業の収益環境だ。短観では仕入れ価格判断DIが大企業・製造業で62、中小製造業で76と高水準に達した。非製造業でも大企業が56、中小企業が68となっており、相対的に中小企業が強いコスト上昇圧力を感じていることがうかがえる。

外為市場で円安進行が止まらないリスクも懸念される。SMBC日興証券の丸山凜途シニア金利・為替ストラテジストは「輸入業が多い中小企業では、円安によるコスト増が利益を圧迫するリスクがある」と指摘する。

日銀の6月の金融政策決定会合における「主な意見」では、「中小企業の賃上げスタンスは慎重化していない一方、企業間物価の上昇は既に明確化しており、特に物流費の上昇は、基調的な物価上昇率に影響するおそれがある」との意見が紹介されていた。

日銀は全国の支店網を通じた企業ヒアリングなどで雇用・所得動向を点検している。日銀が重視するのは賃金と物価の好循環の持続性であり、27年も高水準の賃上げが維持されるとの見通しが強まれば、年内の追加利上げを後押しする要因になりそうだ。

(杉山健太郎 グラフィック作成:田中志保 編集:橋本浩)

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