Yusuke Ogawa

[東京 3日 ロイター] - 今年6月の株主総会で、アクティビスト(物言う株主)から提案を受けた日本企業は過去最多を記録した。国内のアクティビズムの傾向について、企業法務に詳しい西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士は、「株主提案で社外取締役を送り込むなどして、経営への関与を強め、MBO(経営陣が参加する買収)を含む非公開化につなげようとする動きが広がっている」と指摘した。

アクティビストは短期的利益を確保する一方、「非公開化の過程で、企業は多額の負債を抱える場合が少なくない。成長投資よりも借入金の返済が優先されれば、国全体の経済成長にもマイナスとなりかねない」と警鐘を鳴らした。

また、「企業統治改革を促す存在として一定の評価を受けているとはいえ、最近では弊害の方が大きく、政府は欧米並みの対策を検討すべきだ」との見方を示した。一問一答は次の通り。

――日本におけるアクティビストの活動傾向は。

以前は、増配や自社株買いなどの株主還元を求める「バランスシート型」が主流だった。しかし近年は、「MBO・非公開化誘発型」ともいえる動きが広がっている。投資先企業を非公開化に導けば、アクティビストは保有株をプレミアム付きの高値で売却できるためだ。

米ダルトン・インベストメンツのジェームズ・ローゼンワルド最高投資責任者(CIO)が社外取締役に就任し、その後、米投資ファンドのカーライル・グループによる買収で上場廃止となったホギメディカルが典型例だ。

6月の株主総会でも、アクティビストによる取締役の選解任提案が相次いだが、社外取締役を送り込んで経営への関与を強めたうえで、最終的に非公開化を促す狙いがある場合も多いとみられる。

――「MBO・非公開化誘発型」の問題は何か。

非公開化の過程で(株式の買い取り資金の調達に伴い)企業が多額の負債を抱えやすい点だ。金利上昇局面では、その負担が一段と重くなる。本来であれば成長投資によって収益拡大を目指せる企業でも、借入金の返済が優先される恐れがある。アクティビストの出口戦略は、中長期的な成長を期待する機関投資家や個人株主の利益と必ずしも一致しない。

なかでも問題なのは、アクティビストが非公開化後に再出資するケースだ。一般株主は退出を余儀なくされる一方で、アクティビストは将来の成長の果実を享受し得る。いわば「一粒で二度おいしい」構図であり、株主平等原則の観点からも疑問が残る。

こうした傾向は、海外よりも日本で顕著だ。米国ではアクティビストの株式保有比率が10%未満にとどまることが多いが、日本では20%から40%超まで買い進める例も少なくない。これほど多くの株式を保有すると、市場で処分した際に株価の下落を招きやすくなる。

その結果、自社株TOB(株式公開買い付け)やMBO、PEファンドによる買収といった非通例的な取引を通じて、株式をまとめて売却しようとする動きが強まっている。アクティビストは企業統治改革を促す存在として一定の評価を受けているとはいえ、最近は荒っぽい手法が目立ち、弊害の方が大きい。

――国としてどのような対応が必要か。

会社法改正に向けた中間試案では、「実質株主」の把握制度や大量保有報告規制違反の株主についての議決権制限、株主提案権の見直しなどが示された。ただ、アクティビスト対策を目的にしておらず、抑制効果には限界がある。

今後検討に値するのは、欧州の一部で導入されている長期保有株主の議決権を優遇する仕組みだ。中長期で企業を支える株主の発言力を高めるためには、米国を参考にしながら「短期売買利益提供制度」の実効性を向上させることも選択肢の一つとなり得る。

さらに、法令違反に対する制裁の厳格化も欠かせない。例えば日本では、大量保有報告書の不提出や虚偽記載への課徴金が極めて少額だ。複数の投資家が協調してひそかに株式を買い集める「ウルフパック(オオカミの群れ)戦術」をけん制するためにも、(国会で審議中の)金商法改正案に盛り込まれている課徴金の引き上げだけでなく、証券取引等監視委員会の人員増強による執行の強化など、より踏み込んだ措置を議論すべきだろう。

――海外からの対日投資の萎縮につながらないか。

これらの施策は、規制を過度に強化するというより、単に欧米並みの水準に近づけるものだ。対日投資を阻害することにはならないだろう。

自民党ではアクティビスト対策を検討するプロジェクトチームが発足しており、政治家の間でも危機感は高まっている。これまでの日本の市場改革は、本来の趣旨以上に「株主第一主義」的に受け止められてしまった節がある。現在は、そのバランスを取り戻そうとする局面にあるといえる。

政府・与党が関心を寄せるのは、経済安保対策の側面もあるからだ。アクティビストや外国系の仕手筋が経営への発言力を強めれば、重要技術などの「国富」が海外に流出するリスクが生じる。また、資金の最終的な出し手が見えにくいことから、安全保障上の懸念国が関与している可能性も否定できない。

――日本のアクティビズム・ブームの見通しは。

政府が対策を講じることで、勢いが弱まる展開もあり得るだろう。ただ、円安の進行により日本企業は海外勢のターゲットになりやすく、直ちに沈静化するとは考えにくい。当面は今の流れが続くのではないか。

企業経営者に求められるのは、株式市場との対話を深めることだ。アクティビズムの本質は、価格の歪みを利用したアービトラージ(裁定取引)にある。

自社の価値や成長戦略を市場に適切に伝え、株価が割安な状態を解消できれば、アクティビストによる介入の余地は小さくなる。つまり、平時からIR(投資家向け広報)・SR(株主向け広報)活動などを通じて株主との信頼関係を築くことが、最も有効な防衛策といえよう。

(聞き手・小川悠介 編集:橋本浩)

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