Howard Schneider

[ワシントン 2日 ロイター] - 米労働省が2日発表した6月の雇用統計が市場予想を大きく下回ったことを受け、米連邦準備理事会(FRB)内で労働市場の読み方を巡る議論が改めて活発化する可能性が出てきた。人口の高齢化や厳格な移民政策により、働ける人の数自体が減少している可能性があるためだ。

6月の非農業部門雇用者数は5万7000人増加と、ロイターがまとめたエコノミスト予想(11万人増)を大幅に下回った。4─5月の力強い雇用増も下方修正された。それにもかかわらず、失業率は4.3%から4.2%へとわずかに低下し、失業中と回答した人の数は21万3000人減少した。

一方、就業していると回答した人の数も約50万人減少しており、失業率の低下は主として、そもそも労働市場から人々が退出したことによるものだった。労働力人口は6月に約70万人減少、トランプ大統領が政権に復帰して以来では約130万人減っている。2025年1月のトランプ氏の第2期政権発足時と比べ、6月の就業者数は約150万人少ない。

こうした「悪い失業率低下」は、中央銀行にとって診断が難しい。表面的な失業率は労働需給の引き締まりを示すものの、労働力人口の減少は将来の成長にとって気掛かりなサインだからだ。

求人サイトのグラスドアのチーフエコノミスト、ダニエル・チャオ氏は「失業率の4.2%への低下は、『間違った理由による良いニュース』だ。採用増加ではなく、労働力の退出によってもたらされたものだ。最近の楽観論にもかかわらず、労働市場は再加速していないことを示している」と述べた。

米労働市場を巡る懸念は、春に雇用が回復し、以前は利下げを視野に入れていた一部のFRB当局者が利上げの必要性を認めるようになったことを受け、ここ数カ月で和らいでいた。

過去の傾向によれば、市場予想を下回った6月の速報値は、7月と8月の統計で大幅に下方修正される可能性がある。6月は改定幅が最も一貫して大きい月の1つで、昨年は労働統計局が大幅な雇用増加を報告してから2カ月後、それを16万人下方修正し、純減とした経緯がある。4月と5月の雇用増加推計は既に合計7万4000人下方修正されており、今後数カ月に典型的な6月の改定パターンが当てはまれば、労働市場を巡る議論はより切迫したものになる可能性がある。

<楽観論に影>

労働市場のその他の面も、FRBの議論の対象に再浮上する可能性がある。生産性向上への楽観論が、働く意欲がある人や仕事を見つけられる人の数の減少によって減殺される可能性があるためだ。

昨年のFRBの議論は新たな移民規制の影響に焦点が当たっていたが、雇用増加の急伸と、これまでこの問題を重視していないウォーシュ新議長の就任で、議論は脇に置かれていた。

しかし、労働力人口問題は米国の成長見通しや、月次の雇用創出ペースが十分かどうかを左右する重要な要素になり得る。FRB理事となった前議長のパウエル氏は、低調な雇用増加でも失業率を安定させるのに十分だとすれば、労働市場は「奇妙な均衡」にあり、FRB当局者を経済の現状について不安にさせるものだと語っている。

こうしたトレンドは政策当局者にとって、労働者数は減るかもしれないが生産性は高まる可能性のある米経済の将来について、重要な問題を提起する。全体の経済成長への影響は、働く人の数と1人当たりの平均産出量の両方に依存するためだ。

ウォーシュ議長は、人工知能(AI)が経済に及ぼす影響について総じて強気の姿勢を示してきた。同氏は1日に開催された欧州中央銀行(ECB)のフォーラムで、米国の生産性の最近の急伸は、平均労働時間が横ばいで推移する中で起きていると指摘。労働時間の伸び悩みが生産の一段の制約要因になり得るとの見方を示した。

ウォーシュ氏は「生産性の上昇と共に、潜在成長率も上昇トレンドにあるようだ」と述べる一方、「労働市場の労働時間は比較的横ばい」と指摘した。

また、「現時点で確定的なものはないが、直近4四半期が示唆するように、それも主にAIでできることが新たに急増する前の話であることを踏まえれば、楽観視する理由はある。その楽観論が今後6─9カ月の政策に反映されるかどうかは、まだ判断するには早すぎる」と語っていた。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。