Kentaro Okasaka
[東京 29日 ロイター] - キリンホールディングスは、投資などの経営判断を支援する独自のAI(人工知能)システムを7月から導入する。感染症の世界的流行や通商体制の変化、相次ぐ紛争や地政学リスクなど事業環境の不確実性が高まる中、AIが各国の政策、規制の動向などを集約し、事業運営に活かせる「インテリジェンス」を提供する。同社は昨年7月に「AI役員」も導入しており、AI活用を加速する。
新システムは、2024年10月に立ち上げた社内のインテリジェンスチームが三菱総合研究所と共同開発した。外部環境変化の早期検知や中長期的なモニタリング、事業影響の定量的分析が可能になる。AIとのチャットでシナリオや前提条件、算出式などを組み立てて評価対象と手法を具体化すると、事業影響を試算したレポートが作成される仕組みだ。3人分の戦力と想定している。
例えば、投資案件を検討する際、当該事業のビジネスプランや対象地域の市場性、長期的な地政学や気候変動によるリスクなどを加味して事業計画の変動要素を判断する。また、災害による被害状況を踏まえ、原料調達供給リスクがグループにどのような影響を与えるのかを見極めることも想定している。
キリンは「AIを単なる情報集約の手段としてではなく、経営判断や事業の議論を深める実践基盤として活用する」と説明。先読みしたシナリオ分析で「経営層の意思決定や戦略策定など経営基盤を強化し、不確実性の高まる事業環境変化に対応し、イノベーションを通じた価値創造をさらに加速させる」としている。
企業のAI活用は増えている。ロイターが昨年10月に実施した調査では、237社のうち約7割が生成AIを導入。多くは営業やマーケティング、人事、総務、経理など現場の業務支援に使っていたが、経営戦略や意思決定に使用しているとの回答も16%あった。
キリンは昨年7月、経営会議を活性化する「AI役員」も導入。過去10年分の取締役会やグループ経営戦略会議の議事録、社内資料、外部情報を学習させ、12人の人格モデルを構築した。複数のAI役員が会議の論点や意見を生成し、抽出結果を実際の経営会議に提示している。
同社によると、中長期的な視点の議論の比率が約4割増加。今年4月からは、対象を持ち株会社にとどまらず、キリンビールやキリンビバレッジなど事業会社の経営戦略会議にも拡大した。