Libby George
[ロンドン 29日 ロイター] - 資産運用会社インベスコが29日発表した最新の調査によると、世界の政府系ファンドと中央銀行(両者の運用資産総額29兆ドル)は、かつてない地政学的な構造変化を背景にポートフォリオを再評価し、エネルギー資産に軸足を傾ける一方で米ドルへの懸念を強めている。
調査は90の政府系ファンドと54の中銀を対象に実施。貿易関税、航路の封鎖、ウクライナや中東での戦争といった環境下で分散投資が重視され、「打撃を受けても持ちこたえられる」ポートフォリオの構築が進んでいることが示された。
回答者の80%がポートフォリオの強じん性を高めるための最も信頼できる投資先として挙げたのは、エネルギー安全保障とエネルギー移行インフラだった。また今年の政府系ファンドの資産に占めるインフラ資産の割合は9%に達した。
インベスコの分析では、エネルギーを大量に消費する人工知能(AI)インフラの構築競争も、こうした資産の魅力を高める要因となっている。
同社の調査責任者を務めるベンジャミン・ジョーンズ氏は「インフレのショック、地政学的な分断、そして市場の集中が進む世界において、投資家は分散投資に関する従来の前提を見直し、より広範な結果に耐えうるようにポートフォリオを再設計している」と述べた。
さらに「(ポートフォリオの)強じん性は『あるに越したことはない』ではなく必須の要件になりつつある」と付け加えた。
近年は債券と株式の相関関係が正(順相関)になったことで、分散投資の手段としての債券への依存度も低下しており、より多くの投資家が流動性と実物資産に焦点を当てている。
一方でドルに対する懸念は「広範かつ深刻化」しており、中銀の61%が、米国の債務水準が準備資産としてのドルの長期的地位に悪影響を与えると回答。この比率は2024年の20%から急増した。
米国・イスラエルとイランの戦争の影響でドル指数は今年3%上昇したものの、米国の政策の不確実性と高水準の債務により、長期的にはドルが弱含みになる恐れがある、というのが複数のアナリストの見立てだ。
信頼できるドルの代替手段が不足しているため、ドル離れの動きは緩やかにとどまる公算が大きい。ただインベスコの調査では、5年後に準備通貨としてのドルの地位が弱まると回答した割合は29%と、22年の12%から上昇した。
また地政学的な緊張を背景に、複数の政府系ファンドや中銀が米国を拠点とするカストディアン(資産保管機関)、取引相手、および清算インフラへの依存度を見直していると報告している。
ある欧州の中銀は、既にカストディアンを米国から他国に切り替えたと述べた。中南米のある中銀は「最悪のシナリオ」に備えて、米国以外の機関と新たなカストディアン関係を構築しているという。
もっとも別の中銀は、こうした動きにはリスクが伴うと指摘。「この行為自体が、米国によって敵対的であると解釈される可能性がある」とくぎを刺した。
回答者の3分の1からは、分散投資のトレンドの一環として、金の保有量を増やす意向だとの声も聞かれた。