Andrew Osborn
[モスクワ 26日 ロイター] - ロシア国内の強硬派は、ウクライナとの外交交渉を放棄して事態をエスカレートさせるべきだとプーチン大統領に圧力をかけている。ウクライナによるドローン(無人機)攻撃に激怒し、有利な条件での終戦を米国が仲介するとの約束が果たされなかったことに憤慨しているためだ。
より厳しい措置を求める声は今に始まったことではない。ロシアのナショナリスト勢力は以前から総動員、ウクライナ首都キーウの政府地区の破壊、ゼレンスキー大統領の暗殺、さらに欧州の無人機工場への攻撃を強く求めてきた。一部の強硬派からは、プーチン氏に戦術核兵器の使用を検討することを求める声さえ出ている。
ウクライナが今月、ロシア首都のモスクワや大都市サンクトペテルブルク、あるいはクリミアを標的としたロシア深部への攻撃を実施したことや、ロシア側が民間人の死者を出したと主張する旅客バスへの2件の攻撃を受けて、こうした要求は一段と強まった。
アナリストによると、こうした強硬論の高まりは、ウクライナの無人機攻撃の到達範囲と影響への懸念を反映している。広大な領土を持つロシアが、2022年に自ら始めた戦争で目的を追求しながら、いかに自国を守るかという、より広範な議論の表れでもあるという。
ナショナリストの富豪コンスタンチン・マロフェエフ氏は、モスクワの製油所がウクライナによる攻撃で火災に見舞われた後、「戦争とはいかなる犠牲を払っても勝利することを意味する。ウクライナ人は戦争状態にあり、持てる全てを駆使して戦っている」と指摘した。
その上で「先人たちがまさにこの目的のために国の総力を挙げて開発し、蓄積してきた核兵器をなぜ使わないのか」と問いかけた。
<和平交渉中止の呼びかけ>
ナショナリスト系の一部の論者はロシア政府に対し、イランが米国に対して有効に用いたとされる軍事・外交戦術を採用するよう促した。65万人超のフォロワーを持つブログの1つは、爆撃によってウクライナの主要都市を居住不能にすることを呼びかけている。また米国が仲介する和平交渉を断念し、ウクライナ国家の完全な破壊を追求すべきだとの意見もある。
約9万人のフォロワーがいるナショナリスト系ブロガーのユーリ・バランチク氏は「(ウクライナの)軍事政権によるモスクワへの組織的な空襲の開始は、米政府のゴーサインなしには不可能だっただろう。そしてなぜトランプ大統領はゼレンスキー氏にそのような青信号を出したのか。答えは非常に簡単だ。イランがトランプ氏の弱みを握り、彼は屈辱的な合意に署名せざるを得なかったからだ」と述べた。
さらに「今トランプ氏は誰かに怒りの矛先を向ける必要がある。だからわれわれに選択肢はない。われわれがトランプ氏を出し抜くか、彼がわれわれを出し抜くかだ」と通信アプリのテレグラムで述べた。
ロシア大統領府に近い情報筋は、プーチン氏はこうした強硬な言説を許容できる立場にあるとみている。プーチン氏は、26年かけて築き上げた厳格に統制された政治体制の頂点に立っており、ナショナリスト系ブロガーも一定のルールに従わざるを得ないためだ。
ただ複数のアナリストは、ロシア政府が依然として外交的解決の可能性を残しておきたいと考えているとしても、こうした発言は世論をあおり、より広範な軍事作戦への期待を高めることで、意思決定が複雑化する恐れがあると指摘する。
<強硬派の圧力に抵抗>
今のところロシア政府は、交渉を断念せよという強硬派の要求を拒んでいる。ただ、ロシア政府高官3人は、米国との協議が進展しておらず、昨年のアラスカでのプーチン氏とトランプ氏の会談で米国が提示した和平案をワシントンが履行していないと非難した。
プーチン氏自身もナショナリストの最も過激な提案を支持することは避けているが、ロシア国防省は4月、ウクライナ向けに無人機を製造していると主張する欧州数カ国の工場の住所をあえて公表しており、これはそれらが攻撃対象になり得るという警告のように見受けられた。
ロシア外務省も先月、プーチン政権がキーウの軍事目標に対して「組織的な攻撃」を開始する意向であると述べ、エスカレーションを示唆。その後実際により激しい爆撃が行われ、その中にはキーウにある1000年の歴史を持つ修道院が被害を受けた事案もあった。
目下プーチン氏は現在の戦略に自信を持っているようだ。23日には軍士官学校の卒業生に対し、ウクライナ東部ドンバス地方の支配を目指す動きの一環として、コンスタンチノフカ市の制圧に近づいていると語った。
プーチン氏はまたロシアに敵対的な欧州の政治勢力について、同氏が「より理性的」と評する対抗勢力によって影が薄くなり、影響力を失っていく公算が大きいと言い切った。
同氏は「われわれとの正常な関係を回復したいと望み、ロシアの戦略的敗北を目指すこの終わりのない動きを止めたいと願う人々が台頭している。最終的には全てうまくいくはずだ」と自信を示した。