Naveen Thukral

[シンガポール 19日 ロイター] - スーパーエルニーニョ現象が今後数カ月間にわたって世界の気象を乱し、食糧生産を脅かす可能性が高い。ただし、世界的な農産物在庫が過去最高水準に近いことや、一部の主要生産地域ではほぼ平年並みの天候が見込まれ、事前の計画が整っていることから影響は限定的になる可能性もある。

気象学者によると、アジアの広範囲に高温と乾燥をもたらし、南北アメリカ大陸に豪雨をもたらす傾向のあるエルニーニョ現象は、今後を強まると予想されている。作物を壊滅させ、社会不安をあおり、世界中で数百億ドルの経済的損失をもたらした過去の記録的な事例を上回る恐れも出ている。

国連食糧農業機関(FAO)のエコノミスト、シャーリー・ムスタファ氏は「世界の在庫や、コメや穀物の最近の収穫状況に関してはいくらかの明るい材料がある」と指摘し、世界の在庫がエルニーニョの影響をある程度緩和する可能性が高いとの見方を示した。

2015―16年に起きた前回のスーパーエルニーニョ現象は干ばつや洪水、世界での記録的な高温をもたらし、アジアからアフリカに至るまでの農業生産に打撃を与えた。その前の1997―98年も広範囲にわたって被害をもたらし、壊滅的な洪水、山火事、作物の不作を引き起こした。

しかし、2026―27年は状況が異なる可能性がある。ここ数年間は記録的な豊作が続き、主要消費国や輸出国を中心に世界の食料在庫が膨らんでいるためだ。

米農務省のデータによると、7月1日時点での小麦世界在庫は2億7995万トンと、5年ぶりの高水準になると予想されている。

世界最大の小麦輸出国であるロシアをはじめ、北半球の主要生産国では豊作の収穫期を迎えている。一方、干ばつの影響を受けている米国の小麦収穫には懸念が残されている。

シンガポールの取引関係者は「現段階では、輸入国の小麦製粉業者は供給を懸念していない」とし、「黒海地域の収穫状況を考慮すれば、今後4―6カ月間の供給に問題はないだろう」との見方を示した。

精米の世界在庫は2026年初頭に過去最高の1億9616万トンに達した。うち世界輸出量の4割を占めるインドの在庫は、政府目標の約5倍の水準にある。

ニューデリーに拠点を置く商社のディーラーは「インドは過去のエルニーニョ現象発生時に生産が圧迫された際、コメの輸出規制を実施した」と振り返りつつ、「今年は小麦と米の在庫が過去最高水準にあるため、政府がコメの輸出を制限する可能性は低いだろう」と予測した。

世界有数のコメ輸入国であるインドネシアも記録的な在庫を抱えている。当局者は、農家はエルニーニョ現象のリスクを軽減するため、稲作を急いでいると明らかにした。

世界3位のコメ輸出国であるタイでは、貯水池の水位が過去10年間の最高水準に達している。アナリストらは、これが新しく植えられた苗の生育を助ける可能性が高いと指摘した。

米農務省の予測によると、9月1日時点でのトウモロコシの世界在庫は3億0340万トンと、3年ぶりの高水準となる見込み。一方、大豆在庫は1億2550万トンとなり、過去最高だった25年の1億2600万トンをわずかに下回る見通しだ。

<パーム油生産に恵みの雨>

パーム油の主要生産国であるインドネシアとマレーシアでは、大部分の地域で降雨が続いている。インドネシアの小規模農家団体APKASINDOのグラット・マヌルン会長は「カリマンタン島とスマトラ島の全体を見渡すと日差しとともに降雨も続いており、パーム油の生育に適した状態が維持されている」と言及。

アナリストらは、近年植えられた新しいパーム油の品種は干ばつへの耐性が高く、1997―98年のエルニーニョ現象以降に樹木は徐々に高温環境に適応してきたと説明する。

とはいえ、世界は依然としてパニック的な反応や輸出規制の影響を受けやすく、それによって穀物供給が逼迫(ひっぱく)する可能性もある。

FAOのムスタファ氏は「過去にも各国政府が供給リスクにどのように反応し、国内の十分な供給を確保するための措置を講じてきたのかを見てきた」とした上で、「その大部分は輸入業者が購入についてどのような決定を下し、輸出業者が供給ルートを維持できるかにかかっているだろう」との見解を示した。

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