Jeffrey Dastin
[サンフランシスコ 2日 ロイター] - 米新興企業アンソロピックは2日、ソフトウエアの脆弱性を発見する能力で世界中の政府や金融機関の注目を集めている同社の人工知能(AI)「クロード・ミュトス」の限定公開版(プレビュー)提供拡大計画を発表した。
この高性能AIを利用してソフトウエアのセキュリティーを確保する協力的枠組み「プロジェクト・グラスウィング」のパートナー組織を約50から約200に広げる。各パートナーはプレビューにアクセスする前に、特定のセキュリティー要件を満たす必要があるとしている。
アンソロピックは展開に当たり、米政府や既存のグラスウィングのパートナー、その他のセキュリティー業界関係者と協力したと述べた。
4月にクロード・ミュトスの限定公開版が発表されると、小さなバグを組み合わせて悪用する方法を顕在化させるアンソロピックの技術により、事前に対策が講じられていないソフトウエアをAIがハッキングできるようになるのではないかとの心配が急速に広がった。
ベセント米財務長官と当時のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、銀行の最高経営責任者(CEO)らと緊急会合を開き、そのリスクを警告。一方で、金融機関はアクセス権を求め、脆弱性をふさぐために奔走した。
アンソロピックによれば、パートナー組織は既に「高」または「緊急」とみなされる1万件以上のセキュリティー上の欠陥を発見した。ただ一部の業界専門家は、無制限なハッキングへの懸念は大げさに伝えられているとの見方を示した。
アンソロピックは、新たに加わる組織の名前を明かすことを拒否した。
ただ新たなグラスウィングのパートナーは15カ国以上に拠点があり、医療、電力、水道、通信、ハードウエア業界の防御を強化しているという。アンソロピックの広報担当者は、提供拡大先には政府機関も含まれているとしている。
パートナー組織への大規模な攻撃があれば、1億人以上に影響を与える可能性がある、というのがアンソロピックの推定だ。プロジェクト・グラスウィングは、これほど強力なAIが他のプロバイダーからも広く提供されるようになる前に、ソフトウエアのインフラを強化することが目的。アンソロピックはわずか6カ月から12カ月でそうした同性能のAIが普及するとみている。
またアンソロピックは今後数週間以内に追加の安全対策を講じた上で、このクロード・ミュトスと同等の能力を備えたモデルを全顧客に提供することを目指す方針だ。
ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOは2日の経済イベントで、オープンソースモデルもすぐにクロード・ミュトスと同様のことが可能になるため、何らかの防御策が必要だと強調しつつ、これらのモデルに関する情報は企業間でもっと広く共有されるべきだと訴えた。
ソロモン氏は「私が言えるのは、多くの企業グループが多大なテストを行っているということだ。他の企業や経済全体が学べるよう、情報をより広く共有することも重要だ」と強調した。
ゴールドマンはクロード・ミュトスをテストしている金融機関の1つ。