リー首相の息子「政治に無関心」
初代のリー・クアンユー首相の後継者となったゴー・チョウクトン首相はリー一族ではないが、それ故に就任直後から「リー・シェンロン氏への中継ぎ政権」「リー・クアンユー首相のクローン」などの批判が起きた。これは父親が長男に直接政権を譲ることで起きる「世襲」批判を避ける狙いがあったと言われており、今回も同様の措置で「いずれはリー・シェンロン首相の息子が政界入りして"王朝"を継承するのではないか」との憶測も出ている。
そのリー・シェンロン首相の息子リー・ホンイー氏は2017年6月にFace Bookに「私は政治に心底関心がない」と投稿して政界進出の可能性を一応全面的に否定している。
実はリー一族を巡ってはリー・クアンユー初代首相の長男であるリー・シェンロン首相に対し、次男つまり弟のリー・シェンヤン氏(シングテル元CEO)と長女、妹のリー・ウェイリンさん(国立脳神経科学院運営)が共に「父の遺産を政治課題実現のために悪用している」「リー一族は当代限りで政界から引退するべきだ」などと主張する事態になっている。
兄弟の諍いの背景には「父親の遺産相続」を巡る問題があり、そのため弟リー・シェンヤン氏と妹リー・ウェイリンさんが共に「首相は息子を首相後継者にする政治的野心を抱いている」と指摘しているとも言われる。
兄弟が共に息子の政界入り否定
こうした経緯からヘン氏が次期首相に就任しても「リー一族の世襲批判を抑えるための中継ぎ政権」との批判が再び出てくる可能性は排除できない。リー・シェンロン首相の弟と妹が「シンガポールという国は(リー)一族より大きくあらねばならない」と現体制を厳しく批判していることも、そうした空気が国民の中に存在することの証左と言える。
弟のリー・シェンヤン氏の長男の政界入りも一時噂になったことがあるが、「息子は米大学での研究者をしており、政界入りには関心がない」とリー・シェンロン首相と同様に一族の政界入りに否定的な立場を示している。
国民の中には、そうしたリー・クアンユー初代首相の長男、次男がそれぞれの息子について「政治に無関心」という発言を信用していない見方も存在する。
もっとも政府による報道規制で官製メディアのマスコミしか存在しないシンガポールで、正面切って現政権や歴代首相とその一族を批判することは許されておらず、どこまでそうした「リー王朝への反発」の空気が広がるかどうかは未知数である。
シンガポールが「明るい北朝鮮」を脱して本当の意味での民主国家に生まれ変わるにはまだ紆余曲折が待ち構えていることだけは間違いないだろう。
