エルドアンはまた、シリア内戦に関してアメリカに圧力をかけてくる可能性がある。アメリカの支援(とサウジ資金)でシリア領内にクルド人勢力の安全地帯ができる事態は、絶対に受け入れられないからだ。

アメリカにとってのクルド人はシリア内戦における最大の味方だが、トルコ政府にとっては反政府勢力・クルド労働者党(PKK)の仲間だ。イラクとシリア、そしてトルコの国境をまたいだクルド人国家の樹立を目指す彼らを、トルコ政府は許せない。

アメリカは8月、シリアでテロ組織ISIS(自称イスラム国)から奪還した地域への復興支援金(約2億3000万ドル)拠出を凍結したが、サウジ政府とUAEがその穴埋めをした。慌てたエルドアンは独自の代案を示し、シリア北東部からクルド人を撤退させ、米軍とトルコ軍が共同で治安維持に当たろうと提案している。

いずれにせよ、アメリカがサウド王家(とりわけムハンマド)の安泰を望む限り、エルドアンはカショギ殺害事件で手にした「貸し」を最大限に利用してくる。手の内を見せるのは、まだまだ先のことだ。

<本誌2018年11月6日号掲載>

※11月6日号は「記者殺害事件 サウジ、血の代償」特集。世界を震撼させたジャーナリスト惨殺事件――。「改革」の仮面に隠されたムハンマド皇太子の冷酷すぎる素顔とは? 本誌独占ジャマル・カショギ殺害直前インタビューも掲載。
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