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[ワシントン/北京 16日 ロイター] - トランプ米大統領の訪中は、米中首脳会談としては成果は限定的だったかも知れないが、中国にとっては明らかに利点があった。昨年の激しい貿易戦争を経て、両国がおなじみの経済・戦略的な対立の構図に回帰したということだ。

トランプ大統領と中国の習近平国家主席による2日間の会談は、トランプ氏が「解放の日」と称する関税を発動し、昨年末に両国が暫定的な貿易戦争の休戦に達した後も、米中両政府がなお、トランプ氏の2期目就任時から続く覇権争いから抜け出せていないことを浮き彫りにした。

米国にとっては、米国が見るところ「重商主義的」な中国の貿易政策からインド太平洋における軍事的影響力の拡大まで、米中関係上の最も懸念すべき問題が依然としてほぼ手つかずのまま残った。

一方、習氏にとっては、一定の余裕が生まれ、ある程度予測可能な諸課題へと回帰したことを意味する。習氏は、この変化を「建設的な戦略的安定」と呼ぶ両国関係の新たな枠組みとして表現しようとしたようだ。

<貿易戦争の休戦>

ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、スコット・ケネディ氏は、2025年初頭におけるトランプ政権の強硬な通商姿勢からの後退を踏まえれば、中国が優位に立ったと言えると述べた。

「145%の関税が課され、米国が中国と世界に対して根本的な変革を迫っていた1年前と比べれば、逆回転が起き、安定に戻った」とケネディ氏は語った。

トランプ氏は2日間の首脳会談に、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)やエヌビディアのジェンスン・フアンCEOなど米国を代表する経営者らを同行させたが、豪華な晩餐会を除けば、大半の参加者に目立った成果はなかった。

今回の会談で米側は、世界市場を混乱させ、トランプ大統領の支持率を低下させているイラン戦争の終結に向けて、中国の支援の約束を取り付けることはできなかった。

「首脳会談は安定を印象づけたものの、膠着(こうちゃく)状態は解消されなかった」と、米シンクタンク民主主義防衛財団の中国専門家クレイグ・シングルトン氏は述べた。同氏は、会談は「控えめで、対外的に打ち出しやすく、可能な範囲の成果を生んだ。現在の米中関係が耐え得る程度の内容だ」と指摘する。

コメントを求められたホワイトハウス当局者は、ボーイング機の販売や米国の輸出拡大に向けた農業合意を挙げ、「トランプ大統領は中国の習主席との良好な関係を生かし、米国民のために成果を持ち帰った」と述べた。

在ワシントン中国大使館の報道官は、習氏とトランプ氏の会談を「率直で、踏み込んだ、建設的かつ戦略的なものだった」と評し、「二つの大国同士が正しい付き合い方を模索した」と付け加えた。

アナリストらによれば、トランプ氏は昨年の貿易戦争において、関税が中国に一方的な譲歩を強いる威力があると過大評価していたようだ。中国政府は対抗関税で報復し、米産業が必要とするレアアースなどの重要鉱物の供給を絞ると警告して、不安定な膠着(こうちゃく)状態を招いた。

米側は中国の主要銀行への制裁など、他の金融・技術的手段を行使することもできるが、米政府はそれによって生じる経済的打撃を受け入れる姿勢を示していない。

基調の変化を反映するように、会談では長年にわたる米国の要求事項が公式に言及されることはなかった。その一つが、中国の過剰生産能力への対処の要求だ。米国などの貿易相手国は、中国の低価格製品が自国市場に不公正に流入していると主張してきた。

中国は、国内経済の低迷を乗り切りながら、米国との競争の流れを長期的に変え得る技術力の獲得を目指しており、この脆弱な休戦状態に満足しているようだ。

トランプ政権の高官らは、会談前から大きな成果への期待を低く抑え、昨年10月に合意した、5カ月後期限を迎える貿易休戦の延長を急ぐ必要はないとの立場を示していた。

<「期待を大きく下回る」>

貿易交渉に詳しい関係者によると、中国はトランプ政権が望むよりも長期の休戦延長を望んでおり、また、今年米連邦最高裁判所によって無効とされた米国への輸入品に対する一部の関税を復活させる可能性のある、現在進行中の米国の調査についても安心材料を求めていた。

匿名を条件として語ったロイターの情報筋によると、今回の首脳会談では双方とも具体的な提案をほとんど行わなかった。また、一部の通商合意は、習氏がホワイトハウスを訪問する予定の秋まで持ち越される可能性があるという。

今回の会談の商業面での成果は乏しく、トランプ氏が17年に中国を訪問した際とは対照的だ。当時、トランプ氏に同行した企業は、総額2500億ドル相当の契約や覚書を締結した。

今回の会談では、米半導体大手エヌビディアの人工知能(AI)向け半導体「H200」を中国に販売することに関して何の進展もなかった。これは、中国のAI開発を後押ししないよう政権に警告していたワシントンの共和、民主両党の対中強硬派にとっては、おそらく安堵材料となる。

まだ正式には確認されていないものの、トランプ大統領は、米航空機大手ボーイングが中国向けに200機のジェット機を販売する契約を締結したと述べた。これは当初予想されていた500機、そして17年の訪中時に中国が購入に合意した300機を大幅に下回る数だ。

ホワイトハウス当局者は、米国が新たな貿易委員会を設置したと述べた。米当局者らはこれについて、安全保障上の機微に触れない品目の関税を引き下げるための共同メカニズムだと説明していたが、詳細はほとんど示さなかった。

米通商代表部(USTR)元次席代表代行のウェンディ・カトラー氏は、経済面での成果を「期待を大きく下回るものだ」と評した。

しかし、中国にとって、今回の会合は冷静に競争を見据える前向きな一歩だったと、北京の中国人民大学で国際関係学を教える崔守軍教授は述べる。同氏によると、今回の首脳会談は、両政府が「もはや米中関係を協力的な黄金時代に戻そうとは考えておらず、競争と意見の相違が長期的なものであることを認識している」ことを示したという。

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