※本書は趙海成・著『河川敷の『原住民』――令和ホームレスの実像』扶桑社新書より一部を抜粋・編集したものです(前編)。
「生活保護」を受けた宇海くん
2025年末のある月曜日、私は征一郎さんの住処を訪ねた。
普段、私が彼を訪ねるときには、ついでに宇海くん(仮名)の近況も尋ねることにしていた。しかし夏に入ってから、宇海くんはあまり家にいないことに気づいた。
後で聞いたところによると、彼はジムチェーンに入会して会員になったという。暑さをしのぐために、毎日ジムに行き、そこで電子小説を読んだりスマホでニュースを見たりして時間をつぶしているらしい。
若い弟子は年上の師匠よりも時代と共に進み、生活がスマートであることを認めざるを得ない。
そしてこの日、宇海くんの意外な近況が舞い込んできた。なんと、宇海くんが国の生活保護を申請し、まもなく「施設」に引っ越しするというのだ。
これは私にとって少し驚きだった。当初、宇海くんが私に話していたのは、1年間ホームレスとして四季を通じて野外生活を体験した後、新たな道を選ぶつもりだったからだ。
計算してみると、彼が大阪から上京し荒川沿いに「定住」してからわずか7か月しか経っていない。まさか、過酷な野外生活に耐えられず、早々に撤退したのだろうか? それとも何かが起きて、計画を変更したのだろうか?
さらに言えば、宇海くんは年齢が40歳を過ぎたばかりとホームレスとしては若年層に属し、体にも特に病気はないのに、どうして国家の生活保護を簡単に申請できたのだろうか?
いずれにしても、宇海くんは荒川橋の下のテントに別れを告げ、施設に向けて出発しようとしている。
私は、その話を聞くとすぐに征一郎さんの居場所を後にして、宇海くんのところへ行った。彼ら師弟の間は橋脚がひとつ隔てているだけだ。