Takahiko Wada
[東京 13日 ロイター] - 黒田東彦前日銀総裁は13日、都内のイベントで、原油価格高騰でインフレと経済の停滞が共存する「スタグフレーション」的な状況への金融政策での対応には限界があるとして、「財政政策とのコーディネーションが必要になってくる」と述べた。ただ、高市政権が志向する「高圧経済にする必要はない」と強調した。
黒田前総裁は、足元で2%物価目標は「安定的・持続的に達成されている」とし、実質金利を大幅にマイナスにしておく必要はなく、政策金利の引き上げは「当然」だと指摘した。ただ、米国・イスラエルとイランの戦争の帰すうが金融政策運営を難しいものにしており、日銀は景気下振れリスクと物価上振れリスクのどちらが大きいのか見極めていかなければならないと述べた。
1970年代前半のようなスタグフレーションに陥る可能性は低いものの、インフレへの対応として「金融政策の正常化プロセスの加速や金融を引き締める必要が出てくるかもしれない」と話した。
<ドル160円突破に否定的>
黒田前総裁は、日本経済の実力からすればドル/円は120―130円程度が「均衡レート」だと述べた。その上で、160円に乗せようとすると「政府が介入する傾向がある」ため、「なかなか160円を突破するような円安になるとは思わない」と指摘した。
政府が4月30日や5月の連休中に行ったとみられる為替介入については「一定の効果はあった」とする一方で、介入効果の持続は難しいとの見方を示した。
また、為替安定のために、政府の為替介入と日銀の利上げを同時に行う可能性を問われると「そういう協調は一切やりたくない」というのが中銀の考えだと述べた。
一方で、10年金利が足元で2.58%程度まで上昇していることについては、物価上昇率が2―3%程度で推移し、政策金利が徐々に引き上げられている中で「非常にノーマルな状況」と語った。
黒田氏は東京経済大学が主催したシンポジウムで講演し、対談やパネルディスカッションに臨んだ。