[ロンドン/ベルファスト 8日 ロイター] - 7日に行われた英統一地方選結果を受け、「連合王国」を構成する4カ国のうち3つで、初めて独立派政党が政権を握る見通しになった。ナショナリストらは、これは数世紀にわたる連合王国の歴史の「弔鐘」だと評している。
イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの分裂が直ちに起こるわけではなく、世論調査でも有権者は独立以外の問題を重視している様子がうかがえる。ただ今回の結果によって、英国の統治がより困難になる公算は大きい。
北アイルランド自治政府首相で、アイルランドとの統一を求めている民族主義政党シン・フェイン党のミシェル・オニール氏は、イングランドの地方選挙と並行して行われたスコットランドとウェールズの議会選挙を「地殻変動の瞬間」と表現した。
オニール氏はロイターに「ここ(北アイルランド)の人々、そしてスコットランドやウェールズの人々にとって、連合王国政府の時代が終わりに近づいていることを、これ以上に明確に示す兆候はないだろう」と語った。
<終幕に近づくリスク>
連合王国の4つの国はそれぞれ誇り高い独自のアイデンティティーを持ち、数世紀にわたって政治的実体として統合される前は、定期的に戦争を繰り返してきた。連合王国成立後も、その結び付きにはしばしば緊張が走っている。
ここ数十年間では、北アイルランドの連合王国内での地位を巡り、アイルランド民族主義者と親英派「ロイヤリスト」の間で30年に及ぶ紛争が続いた。紛争は1998年に終結し、現在は権力分担による和平合意の下で両陣営が共に統治しているが、民族主義派のシン・フェイン党が2022年に第1党となり、24年に初めて自治政府を樹立した。
スコットランドでは07年から独立派のスコットランド民族党(SNP)が政権を担っている。14年の住民投票でスコットランド住民は独立を否決し、近年の指導部の不祥事によって弱体化したにもかかわらず、SNPは今回の選挙でも政権を維持した。
またウェールズではウェールズ民族党が、地元議会(セネド)で初めて第1党になる勢いを見せている。背景には、ロンドンの議会から100年間中央政府で政権を担ってきた2大政党、つまりスターマー首相率いる労働党や最大野党の保守党に対する有権者の離反がある。
長らく欧州連合(EU)離脱派として活動してきたナイジェル・ファラージ氏が率いる新興右派ポピュリスト政党「リフォームUK」も、イングランド、スコットランド、ウェールズの全域で躍進した。イングランドの民族主義を基盤として台頭したリフォームUKが有権者を引きつけるのは、同党が「既成政治」と呼ぶ従来の政治体制を拒絶する姿勢だ。
経済の停滞、長期化する生活費危機に有権者が怒り、そして「イギリスの黄金時代は終わった」という認識が広がる中で、現状打破を訴える声が浸透している。
かつて労働党のトニー・ブレア政権下でスコットランド担当相を務めたジョージ・フォルクス氏は「われわれが無意識のうちに連合王国の終わりに向かって突き進んでしまう現実的なリスクがある。一度勢いがつけば、止めるのは難しい」と警鐘を鳴らす。
フォルクス氏は、英政府が4つの国で構成される新しい議会を設置するなど新たな憲法上の解決策を提示すべきであり、そうしないと10年以内にどこかの国が離脱する恐れがあると指摘した。
<短期的な独立への道筋なし>
現時点で、各民族主義政党には連合王国離脱に向けた短期的なロードマップは存在しない。
SNPを率いるスコットランド自治政府首相のジョン・スウィニー氏は、スコットランド議会で過半数の65議席を獲得するには至らない見通しであり、同氏が主張していた「2回目の住民投票を実施する信任」を得ることはできなかった。
歴代の英政権は近年、スコットランド自治政府による独立の是非を問う新たな住民投票の要求を拒否し続けており、55%対45%で否決された14年の投票結果は「一世代に一度のもの」として有効であると主張している。
100年間ずっと労働党が第1党だったウェールズでは、ウェールズ民族党が96議席の議会で少数与党政府を樹立し、1999年の議会創設以降で初めて政権を握る見込みだ。
同党の幹部らは、独立の是非を問う住民投票を最初の任期中に強行することはないと述べている。ウェールズが抱える多くの問題への対処が優先されるためで、デリス・ジュエル副党首はロイターに、独立が検討されるのは2期目に勝利した場合だと語った。
北アイルランドについては、1998年の「ベルファスト合意(グッドフライデー合意)」により、アイルランド統一を支持する人々が多数派になる可能性が高いと判断された場合、英政府は住民投票を実施する義務がある。しかし、現在の世論調査では、投票が行われても否決される見通しだ。
<ファラージ氏と次期総選挙を注視>
世論調査によると、独立への支持はスコットランドで約50%、北アイルランドで約40%、ウェールズで25%となっているが、有権者がこれらの地域で独立志向の左派政党を支持している理由は、それ以外の要因も含まれている。
ユーガブの調査からは、今回の選挙でのスコットランド住民の関心事項として、独立は経済、医療、移民、教育、住宅に次ぐ6番目にとどまり、ウェールズでは独立が14番目の関心事項に過ぎなかった。
ただSNPやウェールズ民族党の政治家らは、イングランドのナショナリズムと結び付きの強いファラージ氏が29年までの次期総選挙で勝利する可能性があれば、人々の意識はさらに独立へと向かうと考えている。
ウェールズ民族党のジュエル氏は、ファラージ氏と反移民を掲げるリフォームUKについて「英国の未来に対する不快なビジョンに反対するという一点で、非常に多くの人々を団結させている」と述べた。
英政府にとってより差し迫ったリスクは、独立派政党がいわゆる「ケルト同盟」を結成し、支出、税制、福祉に関するさらなる権限を自治政府に譲渡するよう迫ることだ。
スウィニー氏は最近、シン・フェイン党の党大会に連帯のメッセージを送り、ウェールズ民族党党首ラン・アプ・イオルウェルス氏は、英政府は「われわれの国家、そしてこれらの島々の歴史を変えよう」とする政党の声に「真剣に耳を傾けざるを得なくなるだろう」と言い切った。
もっとも、この「ケルト同盟」が容易に足並みを揃えられるとは限らない。
キングス・カレッジ・ロンドンのアンドルー・ブリック教授(政治学)は「彼らが潜在的に対立する可能性もある。われわれは、それがどのように機能していくのかを見届けることになるだろう」と述べた。