リサ・マーシャル
※本記事はインタビューに基づき編集・構成しています
夫が亡くなるまでの間に何か兆候はなかったのか、とよく聞かれる。だが、正直に言って、そんなものは一つもなかった。あの日も、夫はいつも通り仕事に出かけ、そして二度と帰ってこなかった。
2023年3月7日、3人の子供たちを寝かしつけていた時のことだ。玄関のチャイムが鳴った。仕事に出ていたアランがようやく帰宅したのだと思ってドアを開けると、そこにはスコットランド警察の警官が立っていた。その瞬間、何か恐ろしいことが起きたのだと悟った。
アランとは2011年にクラブで出会った。2016年に結婚し、2人の息子と1人の娘を授かり、幸せな年月を重ねてきた。夫婦ともに歯科医として忙しく働きながら家庭との両立に励んでいたが、生活に変わったことはなかった。たしかに2人とも疲れてはいたが、育児中の親なら誰だって疲れているものではないだろうか。
アランは、これまで出会った誰とも違う魅力を持った人だった。個性的で、いつも笑っていた。周囲の人をリラックスさせる天性の才能があり、彼が部屋に入るだけでその場がぱっと明るくなった。
そんな彼が、内面でどれほど苦しんでいたのか、私はこれっぽっちも気づかなかった。
兆候は何もなかった。それこそが、受け入れがたい事実の一つだ。彼はいつも通りの彼に見えた。ある日まで隣にいた人が、次の日にはいなくなってしまったのだ。
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