22年は穀物価格が世界的に高騰しており、ウクライナ戦争に伴う肥料購入コストの上昇をある程度穴埋めできた。しかし近年、穀物・油糧種子は記録的な豊作が続き、価格が低迷している。例えばシカゴ先物市場の小麦価格は4年前の約半分だ。大豆価格も当時は現在より約50%高かった。結果として今、多くの農家は収入が落ち込み、膨らむ肥料費を吸収するのが困難になっている。
多くの農作物では、尿素などの窒素系肥料を毎シーズン使う必要があり、収穫量だけでなく小麦のタンパク含有量など品質にも直結する。一方、リン酸やカリなどの肥料は、短期的には使用量を減らしても即座に減収にはつながらないとされる。しかし肥料の使用量削減も限界に近づいている。中国によるリン酸肥料の輸出規制に、イラン戦争による硫黄・アンモニアの供給混乱が重なれば、リン酸は供給そのものが長期的に逼迫しかねない。
米肥料大手モザイクのアンディ・ユング氏は、最終的に一部の農業生産者は収穫量が落ち込む危険を犯して、肥料の使用量を減らすかもしれないと話す。
商品データ会社アーガスのサラ・マーロウ氏によると、尿素はイラン戦争開始以降、中東のみならず、インド、バングラデシュ、ロシアでも生産が停止し、生産量が少なくとも200万トン分消失した。これは尿素の年間海上取引量の約3%に相当する。さらに、既に船積みされた100万トン弱がペルシャ湾岸地域で足止めされている。
商品市場調査会社ICISのマーク・ミラム氏によると、仮にイラン戦争が近く終結し、ホルムズ海峡が再開されたとしても、滞留している船舶の積載分を市場に流通させるだけで数週間を要する。さらに中東湾岸地域の生産設備が損傷を受けたほか、代替調達先との競争が激化していることから、肥料は供給制約が今後数カ月にわたって続く可能性が高いという。