2026年4月、デンマーク国立博物館の楔形文字コレクションを再調査していた研究者らは、長く収蔵庫に眠っていた粘土板群の中に、古代メソポタミアの神話的な王と歴史上の王を併記する有名な王名表の写しを確認した。
コペンハーゲン大学と同博物館の共同事業「ヒドゥン・トレジャーズ」が発表した。
該当の粘土板自体は学校用テキストとみられ、紀元前3000年頃の王たちに触れる内容が記述されている。研究者のトロエルス・パンク・アルボルは、同系統の別写本にギルガメシュの名が現れることから、ギルガメシュが実在した可能性を示す数少ない遺物の1つだと述べている。
ギルガメシュとは、現存する世界最古の文学とされる『ギルガメッシュ叙事詩』に登場する王。古代メソポタミア文学の主人公として世界的に知られる一方、歴史上のウルク王ギルガメシュとの関係は、以前から完全な虚構とは言い切れないが、英雄譚の内容をそのまま史実ともみなし難いという微妙な位置にある。ブリタニカ百科事典などによると、叙事詩のギルガメシュは南メソポタミアのウルクを治めた王とみられるが、詩や叙事詩で語られる武勲そのものを裏づける歴史的証拠はない。
米国歴史学会の教材も、ギルガメシュの生涯や行動についての決定的証拠はないとしている。
各所の反応を見る限り、論調はおおむね慎重である。コペンハーゲン大学も今回の発見の意義について、「魔術文書やビールの伝票が刻まれた4000年前の粘土板」というタイトルでコレクションの解読に重点を置いており、ギルガメシュの実在可能性が高まったことは、あくまでその中の一項目として扱っている。
複数の海外メディアも「ギルガメシュが実在したかもしれない」程度の報道ぶりにとどまっている。
世界最古の叙事詩で語られた英雄王は実在したのか。実在したとしたら、どこまでが本当の話なのか。今後の研究の進展が待たれる。