「言葉だけの安全保障」は国家を存亡の危機にさらす
英軍の推計では既存の国防計画を維持するだけでも今後4年間で約280億ポンドの資金不足が生じている。政府は昨年秋に「10カ年国防投資計画」を公表する予定だったが、延期が繰り返され、軍需産業や同盟国の不信を招いている。
イラン戦争開始から2週間で英軍が地中海に派遣できた軍艦はわずか1隻。ロシアは海底ケーブル周辺での潜水艦活動や英仏海峡での軍艦航行などハイブリッド戦を激化させている。ロバートソン卿は「すでに宣戦布告なき戦争状態にある」と警鐘を鳴らす。
スターマー政権は対GDP比3%への国防費引き上げ、35年までにNATOの枠組みで5%を目指していると反論するが、具体的な資金裏付けとなる「10カ年国防投資計画」の策定は難航したままだ。「言葉だけの安全保障」(ロバートソン卿)は国家を存亡の危機にさらす。
「米国が同盟に背を向ける可能性に備えるべきだ」
イラン戦争に否定的な欧州と米国の溝は埋め切れないほど広がり、ドナルド・トランプ米大統領は「彼はウィンストン・チャーチルではない」とスターマー氏を批判する。核抑止や情報収集、潜水艦技術、ステルス戦闘機F-35など英国の安全保障面における米国依存度は大きい。
ベン・ウォレス元英前国防相らは「米国が同盟に背を向ける可能性に備えるべきだ」と説くが、スターマー政権はその場しのぎの対応に終始する。英最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は下院審議で「増額について語ることと、実際に予算を与えることは別」と批判した。
スターマー氏は過去15年間に及ぶ保守党の防衛予算削減を並べ立てたが、労働党出身のリンジー・ホイル議長に「ここは野党党首への質問時間ではない」と釘を刺された。スターマー氏の首相としての持ち時間はなくなりつつある。英国が戦争に備える時間も残り少なくなってきた。