Hiroko Hamada
[東京 17日 ロイター] - 株式市場では、米・イランによる協議進展への楽観的なムードが継続する一方、来週から本格化する決算シーズンを前に、原油高が企業の業績ガイダンス(会社見通し)に与えるネガティブなインパクトへの懸念が意識されている。堅調な企業業績を前提とした株高シナリオが修正を迫られるような「落とし穴」がないか、目配りが必要になりそうだ。
<ガイダンスリスクに身構え>
決算シーズンを控え「いわゆるガイダンスリスクが高まっている」とマネックス証券のチーフ・マーケット・アナリスト、吉野貴晶氏は警戒感を示す。
昨年4月には、関税リスクを見通しに反映しなかった安川電機の株価が決算発表の翌営業日にストップ安となるなど、ガイダンスリスクが顕在化した。
今年も中東情勢を受けて原油価格が上昇、米WTI先物は1バレル=90ドル台と米国とイスラエルによるイラン攻撃前の60ドル台より高水準で、企業のコスト増への懸念がくすぶる。丸三証券の投資情報部長・丸田知宏氏は、製造業の多い日本にとって原油は血液であり、中東情勢の影響が見通しにくい中、その血液が回らなくなる状況も想定しなくてはならないと身構える。「最悪の場合、見通しを示せない企業も出てくるのではないか」と話す。
マネックス証券の吉野氏は「米関税の時はトランプ氏の意向に左右されていたが、今回はトランプ氏の意向だけで物事が決まらない点が厄介」と話す。
石油由来の原材料や燃料が手に入らなければ、関連事業の継続自体が困難になる。TOTOは13日、壁や天井などに使われる有機溶剤の原料・ナフサの調達が不安定になっているとして、システムバスとユニットバスの新規受注を停止したと公表。同業各社の株価が連れ安したほか、住宅メーカーなどにも連想売りが波及した。
TOTOはその後、受注再開を発表したが、市場では、次にサプライチェーンの目詰まりを起こすのはどの分野かと警戒感がある。
業種別では、化学など素材系を中心に、原油流通の目詰まりが直接的なリスクにつながるとみられている。東海東京インテリジェンス・ラボのシニアアナリスト・吉田篤氏は「仮にナフサが調達できないとなると当然稼働率も下がる。装置産業だけに、ある一定のラインより稼働率が下がると極端に収益が悪化するため、見通しは慎重にならざるを得ないだろう」と指摘する。
<最高値圏でのシーズン入り>
株価の位置にも注意が必要となる。昨年はトランプ関税ショック直後の急落からの戻りの途上に決算シーズに突入、上値余地が残された状態だったが、今年はすでに最高値圏にある。決算シーズンが「買い場」となった昨年と異なり、「利益確定売りの口実探し」の場にもなりかねない。
市場全体では、指数寄与度の高い人工知能(AI)・半導体関連株が堅調な限り、日経平均への影響は限定的ともみられている。AI・半導体関連銘柄への影響について岩井コスモ証券の斉藤和嘉シニアアナリストは「紛争が半年、1年と続く場合は話は別だが、影響は限られるだろう」と指摘し、今回の関連銘柄の決算は引き続きAI需要がけん引し、おしなべて堅調だろうと話す。
しかし、AI・半導体株にしても、株価収益率(PER)が高止まっている銘柄が多く「前期並み、もしくは前期を上回る予想が出ないと利益確定売りの口実にされる可能性がある」(山和証券・調査部部長、志田憲太郎氏)という。
野村証券は同社が算出する大型株指数のRussell/Nomura Large Cap(RNL)指数の構成企業の2026年度の業績見通しについて3月上旬に、売上高は前年度比4.3%増、経常利益は同10.2%増を見込むとするリポートを発表していた。「現時点では原油高の影響は業績見通しにほとんど反映されていない」と同社リサーチアナリストの元村正樹氏は話す。原油価格10%の変動で経常利益に約1%の影響があると元村氏は試算する。
<試されるIR姿勢>
水戸証券の投資情報部情報課長・岩崎利昭氏は「企業側のIR対応が試されそうだ」とみている。
中東情勢の問題が完全に解決していない中で強気な数字を出しても不信感につながる可能性がある一方、過剰に保守的になっても株価が大きく売られるリスクがあると話す。投資家は企業が為替前提や原油価格動向をどのように見込んでいるかや、妥当な数字が出てくるかなどに注目するという。
ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト・井出真吾氏は「投資家としては、中東情勢の影響を加味した上で見通しを出された方が、納得感がある」と指摘する。仮に影響を全く考慮しない業績予想が示される場合「投資家に不透明感が嫌気され、株価が下落するリスクはあるだろう」と話す。