シンプルながら躍動感に満ちたクーパーの演出
私たち観客はクラブの客の間に体をねじ込むようにして、アレックスが思いもしなかった環境で人生を立て直す様子を見守る。
クーパーの演出はシンプルながら、躍動感に満ちている。雰囲気はデービッド・O・ラッセル監督とのコラボレーション作品を彷彿とさせ、なかでも含みのあるせりふとメインキャラクターの家族が場を盛り上げるあたりは『世界にひとつのプレイブック』に近い。
クーパーはアレックスの友人ボールズを心底楽しそうに演じる。冴えたせりふを自在に操り、張り詰めた空気を笑いで和らげる役どころだ。
俳優として脇に回ることで、クーパーは監督としての語り口に磨きをかけた。とりわけアレックスとテスに扮したアーネットとダーンの演技が、クーパーのビジョンを鮮やかに浮かび上がらせる。
ローラ・ダーンが主役級のキャラクターを演じるのは久しぶりだ。初めてアカデミー賞に輝いた『マリッジ・ストーリー』でも、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でも名脇役として細やかな演技を見せたダーンだが、近年、映画の主導権を握る機会はなかった。
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