2つ目は、AIの社会への浸透が加速するという問題です。アメリカでは、2025年の5月に卒業した大卒が、突然「就職氷河期」に直面して話題になりました。従来は、花形職種であったソフトウェア・エンジニア(SE)であるとか、ファイナンシャル・アドバイザーといった知的労働における「初級職」をAIが奪っていったからでした。

それから丸1年が経とうとしている現在、2026年5月卒業の大卒の就職は「より困難に」なっていると言われています。そして「失われた初級職は二度と人間には戻ってこない」という言い方もされています。これに対して、アメリカ国内での議論は進んでいません。

民主党の一部は、EU内での議論に影響されて、AIはプライバシーの侵害であるとか、教育への悪影響という文脈での規制を主張していますが、その声はあまり大きくはありません。ですが、メガ上場が実現して複数のAI企業がより多くの資金と影響力を手にする中では、AIの社会的影響に関する議論は避けられなくなると思います。

3つ目は、上場を何が何でも成功させたいという力の作用という問題です。ここまで大きな上場となると、GAFAMクラスの時価総額の企業2つ分ぐらいという大きなスケールになります。資金調達も3社合わせた総額が、日本円で100兆円かあるいはそれ以上と言われています。その影響は巨大なものとなりそうです。

中間選挙に影響する可能性も

まず、メガ上場が接近すると金融界全体が影響を受けるのは確実です。上場株を引き受けるための資金確保のために他社の株や貴金属などが売られる可能性もあります。また、別の小規模な上場案件に行くはずの資金が滞るかもしれません。押し切られるような格好で、無理にメガ上場が実行されると、その直後に市場が大暴落する可能性もあります。

さらに言えば、このメガ上場が失敗して思惑通りの資金が集まらないとか、初値が期待外れで、そのまま株価が下がるといった展開になるのは問題です。そうなれば、現在その行き詰まりが危険視されている、ノンバンクのプライベート・ファンドなどが連鎖的に破綻するようなことも起こり得ます。

そう考えると、今年の夏から秋にかけては、アメリカの株式市場は何が何でも活況である必要が出てきます。そこから発想すると、例えばイラン情勢については、イスラエルの思惑は別として、アメリカとしては早々に幕引きを迫られることも起きると思います。11月の中間選挙を含めた政治日程にも影響が出てくるかもしれません。

いずれにしても、この3社のメガ上場という事件は、夏以降のアメリカの経済、社会、政治を大きく動かす要因になると考えられます。

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