なぜ間違えたか? 答えは、間違えない人はいないから
当時はオウム以外にもさまざまな宗教組織の人が、勧誘を目的として家に訪れていたそうだ。しかも姉が応対すると、家に入れてしまう。そんなことが続くなか、著者の抱える不安はどんどん大きくなっていった。
結果的にはそれが「今のうちに姉の記録を残さなくては」という思いにつながり、著者は行動に移すことになったのである。驚くほど長い年月がかかってしまったとはいうものの、結果的にはそれが『どうすればよかったか?』というドキュメンタリー作品に結実した。
本書の最終章で、著者は非常に説得力のある主張をしている。姉が統合失調症であることを決して認めようとしなかった両親についてだ。
両親は姉に統合失調症の急性症状が表れた時、判断を誤ってしまったと思います。両親は失敗だとは思っていなかったかもしれませんが。なぜ両親は判断を間違えたのか? その答えは、間違えない人はいないからです。(176ページより)
ミスを認めないと、ミスが存在しないことになり、さらにおかしなことが起きる。仕事あるいは家族間の諍(いさか)いなど、何についても当てはまることだろう。しかし著者が向き合わざるを得なかった「家族の問題」は、それらに比べて大きすぎる問題であったはずだ。
いずれにしても、人は間違えるのである。本書を通じ、それを改めて実感させられた。
[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。
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