戦略の核心は規模だ。競合をはるかにしのぐ規模でバッテリー工場やEVプラットフォームを稼働できれば、学習曲線とコスト削減が加速する。バッテリーやソフトウエア、製造プロセスの標準化によってその優位性が固定され、国外にも展開しやすくなる。

さらに、石油依存の削減や大規模な輸出などの国家目標に沿って政策、インフラ、金融を統合できる能力は大きな強みになる。中国がこの10年でバッテリーという「道路」を経済全体に張り巡らせている間、日本は流れることのない「水素の水路」の測量を続けていた。

日本の戦後の自動車やエレクトロニクス産業の成長は、長期的な産業戦略と輸出規律、政府と産業界の緊密な連携の上に築かれてきた。しかし、その構造は硬直化している。企業は合意形成と安定を重視し、失敗すると烙印を押される。内部留保は積み上がる一方で、リスクの高いイノベーションは起きにくい。

こうして内燃エンジンやハイブリッド、水素関連など既存技術への投資は続き、EVプラットフォームやソフトウエアへの本格的な投資は先送りにされてきた。その結果が、自動車産業の現状である。

2000年代から10年代にかけて、日本はBEVに大規模な投資を行う代わりに、ハイブリッド車と燃料電池車に注力した。これらの技術は革新的にみえたが、実際には既存のエンジンや燃料インフラの延命につながった。

対照的に、中国はEVとバッテリーを中核的な戦略産業と位置付け、政策、補助金、インフラ、資金を総動員している。重要なのは、試行錯誤を恐れず急速に規模を拡大させる国内企業を支援していることだ。

日本の戦略的な弱体化を意味する「自動車産業の後退」