グレタ・ガーウィグ(Greta Gerwig)監督の『バービー(Barbie)』などこれまでの出演作が示してきた通り、ゴズリングは悲劇の中に自然にユーモアを織り込むことができる俳優だ(アカデミー賞に3度ノミネートされているのも納得)。
そのユーモアは決して作為的には感じられない。ロードとミラーは、原作に備わっている笑いの要素をさらに強めつつ、ウィアーが丁寧に紡いだ温かさを損なうこともない。
グレースが宇宙船内をよろめきながら進み、言葉を取り戻そうとして意味不明な発声を繰り返す場面はユーモラスだ。しかし同時にどこか胸を打つものがある。そして物語が過去へとさかのぼり、彼が現在の状況に至った経緯が明らかになるにつれて、その感情はさらに重く、深いものへと変わる。
彼がそこに至った理由の一つが、エヴァ・ストラットの存在だ。演じるのはアカデミー賞ノミネート歴を持つザンドラ・ヒュラー(Sandra Hüller)で、彼女の厳格な佇まいはグレースとは対照的だ。
ヒュラーとゴズリングが同じ画面に収まる場面は見応えがある。二人は非常に相性が良く、互いの演技を引き出し合っているのが分かる。
ゴズリングの物語の大半は宇宙でロッキーとともに展開するが(これについては後述される)、地球でヒュラーと共演するシーンでは、より繊細で内面的な演技が際立ち、それでいて強い引力を持っている。
上映時間156分の中で、ストラットの物語が占める割合は決して多くない。それでも彼女にも乗り越えるべき課題があり、ヒュラーはこのキャラクターにしっかりと奥行きとニュアンスを与えている。
原作の要素が一部削られているにもかかわらず、単なる一面的な人物にとどまらないキャラクターとして描き切っている。