諸外国では在留管理を入管庁だけに任せていない。カナダでもイギリスでもオーストラリアでも、チェック体制が敷かれている。日本の場合はそれがないので、基準に恣意的なブレが出てくる。しかもその動機が、先ほど言ったように「有権者にうける」だったりする。

日本にいる外国人は現在395万人で、人口の3.2%。これは今後ものすごい勢いで増えていき、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2050年前半までに10%になる。政府は外国人を増やしたくないと言っているが、実際には増やすことを認めているし、社会を維持するために増えていくのは必然だ。

今の生産年齢人口(15~64歳)は7310万人で、これが2050年には5540万人になる。居酒屋の店員も介護労働者も足りておらず、既にいろいろなところが人手不足です。これを支える外国人の置かれた状況は、私たち自身の問題として考えなければならないと思う。

クルド人問題があると言われている川口市の市長選(2月1日投開票)では、「クルド人は帰れ」「外国人の住みにくい街にします」などと言う候補者がいた。

そこで100人の市民に街角でアンケートを取ったところ、クルド人に対して不安を感じている人は4割ぐらいいた。なにが不安かを聞くと、コンビニなどでたむろしているのが怖いとか、ゴミ出しがちゃんとできていないので困るとか。でもこれは、治安問題とはちょっと違う。

川口市で外国人が増えているのは確かで、04年に1万4679人だったのが、 24年で4万3128人とほぼ3倍になっている。だが、市内の刑法犯の認知数は04年に1万6314件だったのが、20年に4529件。人数が3倍になって、犯罪は3分の1になっている。

だから治安は悪くなっていないのに、人数が増えたことで「なんとなくの不安」がある。

「クルド人と話をしたことがあるか」という質問もしたら、1回でも接触したことがある人は10人だけだった。1割です。要するに、外国人がたくさんいても接触する機会がない、ましてSNSなどで外国人の犯罪が多いという投稿を見れば不安な感情が増幅していく。

――そうした実際のデータは貴重だ。分からないから怖い、不安に感じるということだ。

だから、本書を彼らのことを知るきっかけにしてもらえたら、と思う。「不法滞在者」という抽象的な言葉ではなく、怖がったり喜んだりしているリアルな人間として受け止めてもらいたい。

外国人と知り合いになるには、例えば日本語を教えるボランティアをしたり、エスニック料理の店に行ってシェフと話したりするくらいでもいいんです。そうすることで、政府に騙されなくなる。今は外国人の存在を不安に思う人たちが、票田と見なされている。

若い世代は偏見がない