政治よりも脱税摘発

だが、今年に入ってからのロシアマネーの潮流とスイスフランの相場変動とのあいだに何らかの関係があっても不思議はない。それも、最近になって新たに課せられた制裁以外の部分における関係だ。

「ロシア逃避資本の本国還流は現実のテーマだが、最新の地政学的な緊張は、根本的な理由というよりは、単に火に油を注いだにすぎない」と、コンサルタント会社TSロンバードのマネージング・ディレクターであるクリストファー・グランビル氏は語る。

ロシアは2016年、脱税摘発に向けた経済協力開発機構(OECD)のイニシアチブ「金融口座に関する自動的情報交換」に参加したが、スイスを含む参加国間の情報交換プロセスが稼働開始したのは、2018年1月になってからだと、グランビル氏は指摘する。

「ロシア納税者としては、もはやスイスに資産逃避しても安心できなくなった以上、資産を自国に引揚げて、タックス・アムネスティ(租税特赦)を活用し、(ロシアの)税率13%で納税した方がいいかもしれないと感じている」とグランビル氏は言う。

この措置に伴い、どれだけの資金がロシア本国に還流したかは不明だが、中銀のデータによれば、ロシア向けの資金流入のうち約5分の1は、スイスから流入した個人資産だった。

そして過去2カ月の推移をみると、スイスフランは実際、ルーブルに対して約5%下落している。

それと同時にロシアは、租税特赦や特別債券プログラムを使ったり、さらには引揚げていない還流資産に対する処罰をちらつかせたりすることで、オフショア資産が本国に還流するよう圧力をかけている。

ロシア財務省の政策当局者は、ここ数カ月で「数十億ドル」の資産が国営銀行に流入しているとロイターに語り、OECDの自動的情報交換プログラムにより、この流れはさらに加速すると予想した。

「制裁と自動的情報交換プログラムのうち、どちらの効果がより大きいのかは分からない」と同当局者は語った。「資産家らは、資産の逃避先をわれわれが追跡できるとは思っていなかったが、今では、大半が申告を始めている」

(翻訳:エァクレーレン)

Tom Finn

[ロンドン 20日 ロイター]

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