個人情報の提供も押し付けがましい広告も「友達」とつながるための小さな代償と考えるなら、フェイスブックはそれを実現した革新的な企業ということになる。しかしその代償があまりに大き過ぎることに気付けば、フェイスブックの利用は悪魔との取引に思えるだろう。

今回の一件は単なるデータ流出でもなければ、フェイスブック側の不注意なミスでもない。ケンブリッジ・アナリティカがやったことは、まさにフェイスブックが最も得意とすること(膨大な数の個人情報を整理してパケットにし、何らかの商売に使わせること)。だからこそスキャンダルなのだ。

もちろん、今回のような目的で利用することは規約で禁じられていた。しかし見返り(トランプを大統領に!)が大きければ、規約を破る者がいてもおかしくない。しかしフェイスブックは規約遵守を徹底せず、相手の善意を信じて契約し、あとは成り行きに任せている。同社もこの数年で大人になってきたが、会社の本質は変わっていない。

IT関係のニュースサイト、テッククランチのジョシュ・コンスタインは、過去にフェイスブックが世間の集中砲火を浴びても同社を擁護してきた人物。しかし今回は違う。

「フェイスブックと最悪のシナリオの果てしない連鎖」と題する記事で、コンスタインはフェイスブックがデータ乱用を防ぐためのセーフガードなしで新製品を立ち上げ、その意図せざる結果を無視ないし軽視してきた例を10件ほど挙げている。

そういう企業文化が、ついに行き詰まったということか。さすがのフェイスブックも、今回は大目に見てもらえない。

民間企業の自主規制で済む時代は終わったのだろう。これからは国民や議会、政府が立ち上がって、フェイスブックのような会社が個人情報で稼ぐ仕組みを再検討すべきだ。さもないと悪魔に魂を売り渡すことになるだろう。

本誌2018年4月3日号[最新号]掲載

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