もちろん、タケコプターの素材や部品を提供する企業の業績も飛躍的に伸びる。反対に、タケコプターに取って代わられる商品やサービスは衰退の危機を迎えることになる。例えばバイク。さらに電車や地下鉄の利用者も減って、駅のあり方も変わってしまう。
タケコプターの経済効果は、日本国内で1兆円。日本経済を支える一大産業となり、全世界では30兆円規模の市場になるのではないか――。
風が吹いてから桶屋が儲かるまで
もちろん、これは妄想にすぎない。カリスマと呼ばれる藤野氏の妄想だけにリアリティがあるが、よく読めば強引な部分も多い。だが藤野氏は、そもそも「風が吹けば桶屋が儲かる」のような荒唐無稽な因果の連鎖を考えることが、投資家の仕事なのだと言う。
タケコプターの例からもわかるように、それが実現した世界を妄想することは、人々の行動がどう変わり、それによって社会や経済にどういう影響があるのか、誰が恩恵を受け、誰が損失を被るのか......という予測を立てることだからだ。こうした思考が「投資家脳」だという。
藤野氏はこれを「ビジネスシミュレーション」と呼び、本書では計9つのひみつ道具を題材にして、それが実現した世界について(かなり)真剣に妄想を繰り広げている。
例えば、食べるとあらゆる言語を母国語で理解できる「ほん訳こんにゃく」が実現したら、言葉の壁がなくなることで、世界中のビジネスの現場で活躍する日本人が急増。新興国とのビジネスも加速し、日経平均株価は夢の10万円を突破!(するかも?)
もし「どこでもドア」が実現したら、立地による優劣が排除され、真に魅力的な商品・サービスだけが生き残る超競争社会へ突入。さらに、場所によって規定されていた土地の価値が崩壊し、運輸産業は衰退。移動のためのエネルギー消費が激減し、低炭素社会が実現(するかも?)。
妄想は経済だけにとどまらない。「アンキパン」で日本の教育制度は崩壊する(かも?)、「カラオケメイツ」は無縁社会の救世主になる(かも?)......などなど、藤野氏の妄想はあらゆる方向へ飛躍する。この飛躍の幅こそ、高パフォーマンスを上げ続ける投資家の秘密かもしれない。
【参考記事】なぜ投資の初心者が高度なFXをやりがたるのか
妄想を広げることで経済を知る
ビジネスシミュレーションは「投資家の目」をもって世の中を見ることのできる格好のスキルだが、それによって「知らず知らずのうちに経済や投資に対する基礎的な考え方が身につく」ことが最大の魅力だと藤野氏は言う。
オギャーと生まれた瞬間から、オムツやミルク、ベビー服、北欧製の高級ベビーカー......などなど、赤ちゃんが存在することで活発な消費活動が始まります。
赤ちゃん1人分の消費は、さまざまな企業の売上になり、まわりまわって誰かの給料になります。赤ちゃんが1人いるだけで、同じ空の下の誰かが豊かになっているのです。(49~50ページより)
誰もが経済のなかで、経済を動かしながら生きている。経済について知ることは、自分が生きている世界を理解することなのだ。