投資対象は選手だけではない。生徒2500人、サッカー場50面という巨大サッカースクールを設立し、将来のスーパースター育成に着手している。最終的には純中国人のチーム編成で世界トップを目指すという遠大な野望を描いている。漫画かゲームのような快進撃にファンも熱狂し、今や観客動員数は1試合平均4万人を超える人気チームとなった。

<参考記事>「中国は弱かった!」香港サッカーブームの政治的背景

 この広州恒大タオバオの成功を模倣しようと他チームも巨額投資に踏み切り、今冬の"世界一の爆買い"へと結実している。今年のACLでは広州恒大タオバオはグループリーグ敗退が決まったものの、山東魯能と上海上港が決勝トーナメント進出を決めた。日中韓からはそれぞれ4チームが出場したが、決勝トーナメント進出は韓国が3チーム、日中が2チームずつ。広州恒大タオバオが昨年アジア王者になったことも考えれば、クラブレベルの実力では中国はもはや日本を超えているといっても過言ではない。

浦和レッズの4倍の支出、巨額赤字による戦力補強

 いかに中国が金満とはいえ、なぜこれほどの投資ができるのかは誰しも気になるところ。その秘密がこのたび明らかになった。広州恒大タオバオは2015年11月に上場し、この4月に初の有価証券報告書を発表している。これによって収入、支出の構造が判明した。

 2015年の営業収益は3億8000万元(約62億円)。一方で営業費用は13億3000万元(219億円)。差し引き9億5000万元(約156億円)もの赤字だったことが判明した。ちなみにJリーグトップの浦和レッズは、営業収益は58億5000万円、営業費用は56億円だ(2014年)。収入に大差はないが、支出では4倍近い大差がつけられている。「ファイナンシャル・フェアプレー」を掲げるJリーグではとても太刀打ちできない。

 200億円を超える巨額の赤字。わずか半年前に公開された上場時の計画書には2016年からの黒字化を目指すと記されているが、ほとんど詐欺のような話ではないだろうか。ちなみに年度報告書において「2016年からなるべく赤字を減らす」との方針を示す一方で、現在の成績を維持するために年10億元(約164億円)前後の支出を維持する必要があると明記されている。

 中国政府は、2020年までにスポーツ産業の規模を5兆元(約82兆円)にするとの計画を発表している。実際、ネット企業やテレビ局が版権を奪い合うコンテンツバブルが続くなか、中国スーパーリーグの放映権料は5年80億元(約1310億円)で契約されるなど、サッカーコンテンツの価値も高まってはいる。とはいえ、この放送権料はクラブごとに分配されるわけで、巨額赤字の前には焼け石に水でしかない。しかも他クラブも巨額投資を敢行するなか、"最強"の地位を守るためにはさらなる投資が必要となる可能性も高そうだ。

マンチェスター・ユナイテッドを超えた