俺たちへのメッセージ
翌日、マイアミへ飛ぶ機内で滞在中撮りためた画像を見、最後の一枚をじっと眺めるうちに気づいた。
乗っていた四駆の窓越しに、バラックの壁が写っていた。
その壁の中、間に合わせの木で作った扉にひとつの落書きがあった。
俺は思わず声を出しそうになった。
拡大してみると、そこには確かにこうあった。
I LOVE YOU Jesus
あれほどの苦境の中で、と思った。
そして、書かれた言葉が英語であることに気づき、俺はさらなる衝撃を受けた。
フランス語でもクレオール語でもない以上、それは"外側"の俺たちに向けてのメッセージなのだった。
我々は神を愛している。
憐れむなよ、と言われているように思った。
憐れまれるべきはお前たちだ、と言われているようにさえ思った。
ハイチの民がどんなにプライド高い人々であるか、スラムの扉のそのたったひとことが傷跡のように俺の目の奥にはっきりと残った。

ハイチ編終了(次週はまた世界の別な場所からお送りします)
追記
この連載を始めてすぐ、ハイチで出会ったMSFスタッフが「逐一読んでくれている」と聞いた。
紘子さんが直接訳したり、各々が自動翻訳ソフトを使って、英語やフランス語にしているというのだった。
俺は感激したし、彼らが読んでくれていることが大きな励みとなった。
ここで彼らハイチの友人たちに書いておきたい。
あなたがたを尊敬し、人間として誇らしく思っています。
SEIKO ITO

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。