<レズビアンの戦後史から見える、アメリカの「理想の夫婦像」とその裏の姿>

テキサス大学のローレン・ジェイ・ガターマン助教の新著『彼女の隣人の妻』のテーマは、第二次大戦後の既婚女性の同性愛的欲望の歴史だ。大戦の終結から1970年代にかけてのレズビアンの活動家たちの手紙や当時、同性への恋を自覚した女性たちへの聞き取り調査から300件の事例を集めた。ガターマンにスレート誌のレべッカ・オニオンが話を聞いた。

──まず歴史的な流れを確認したい。あなたは本の中で、同性への欲望を抱えている既婚女性にとって、70年代よりも50年代のほうが生きやすい時代だったのではと書いているが、これは意外だった。

理由はいくつかある。50年代には女は結婚するのが当然という考えが非常に強かった。これは文化的な思想であるとともに、経済的な要請でもあった。特に、子供が欲しいと思う女性にとっては、結婚せずに自分と子供の生活を支えるのは非常に難しかった。また、離婚は世間体がとても悪く、結婚生活を継続させたいという欲求や動機は妻も夫も同じように高かった。

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それに結婚に対する意識が40年代後半〜60年代初めと、70年代とでは大きく異なった。だから戦後期の結婚問題の専門家は女性たちに対し、自分の感情的な問題は心の内に秘め、夫には話さないようアドバイスしていた。

この研究で分かったのは、多くの夫があえて見て見ぬふりをしていたということだ。 妻が他の女性と関係を持った証拠があっても、夫はそれを一過性のものだろうと考えていたケースも複数あった。

既婚女性へのプレッシャー