あの音楽を耳にすると

『くるみ割り人形』のおかげで踊りに磨きをかけられるのは、ダンサーにとってありがたいことだ。「何かを何度も繰り返せるのは特別な体験だ」と、ラップは言う。「私たちは何時間もリハーサルをするけれど、その結果は大抵、数時間で終わりになってしまうから」

クリーブランド・バレエ団のジョナス・ゴッドウィンに言わせれば、本作の公演は身体表現を実験するチャンスだ。「異なる腕や頭の動き、違う笑顔を試すことにしている。常にやるべきことがあって、全然飽きない」

機械的に踊るモードに入らないよう努めていると、マクスウェルは話す。「いつだって初めて『くるみ割り人形』を見る人がいる。自分は49回踊っていようと、彼らにとってはシーズンにたった1度の機会。そのためにお金を払っているし、わくわくしている。そう思えば、自分の中から何かが湧き出てくる」

結構な心掛けだ。ただし、舞台を降りたときまでそんな気持ちではいられない。この時期、ショッピングセンターなどでやたらとチャイコフスキー作曲のバレエ組曲『くるみ割り人形』を耳にすると言い掛けると、フリーマントルは声を上げた。

ああ! あれはやめてほしい。ほかの人たちにはショッピング中の素敵なサプライズだろうけど、僕たちにとっては黒板を引っかいたときの音と同じだ」

©2019 The Slate Group

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