<疾患の遺伝を予防するため別の女性の卵子も使い3人の遺伝子を持つ子供がイギリスで誕生する?>

イギリスといえば、30年前に世界初の体外受精を成功させるなど生殖医療のパイオニア。その国で最近注目を集めているのが、3人の親の遺伝子を持つ子供だ。

英議会は15年、「ミトコンドリア置換治療」と呼ばれる体外受精技術を認める法律を可決した。これは、ミトコンドリアに異常がある母親の卵子から核を抽出し、核を取り除いた別の女性の卵子に移植して、父親の精子と受精させる治療。つまり、誕生した子供は2人の母親と1人の父親から遺伝子を受け継ぐことになる。

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この治療は、母親の疾患が子供に遺伝するのを予防することを目的にする。一方で、遺伝子操作によって望みどおりの子供をつくる「デザイナーベビー」につながるとの懸念も広がる。

17年に医療機関としてこの治療の実施許可をイギリスで初めて与えられたのはニューカッスルの不妊治療センター。18年には実際に赤色ぼろ繊維・ミオクローヌスてんかん(MERRF)の疾患を抱える2人の女性に同治療を実施することが決まった。ただし3人の親を持つ子供の誕生例は既に存在する。16年にメキシコで生まれた男の子で、ニューヨークのジョン・チャンのチームが治療を行った(アメリカではこの治療は未認可)。

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写真はイメージ NYS444-iStock

ミトコンドリア置換治療がより幅広い遺伝子操作につながる恐れもある。ミトコンドリアのDNAがいかに個人の特徴を決定するかという仕組みは解明されておらず、「置き換え」の倫理的問題を指摘する研究者も多い。

こうした懸念に対し肯定派は、ミトコンドリアはエネルギーを提供するだけで遺伝子情報を決定するものではなく、遺伝的特徴は細胞核内のDNAによって決まると指摘している。

3人の親を持つ子供の2例目、3例目の誕生は、さらなる議論も生み出しそうだ。

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